2 日常

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 家の中にはあげさせず、中庭に大きめの岩を用意して座らせた。二度と同じ手は踏まない。ここなら最悪潰し合っても家は汚れない。刀の柄を握り、抜刀する準備は整っている。 「怖いなあ。昔以上に荒々しくなったなあ」  軽口が止まらない様子を殺気で黙らせると、話を促す。どの道俺は龍涙について知らないといけない。情報戦など柄でも無いが、貰える物は何でも使うのが俺流だ。 「四日前、俺の所に来たんだよ。龍神会が」 「やっぱりか……。なんて返答したんだ?」 「食ったよ。来た奴は全員なあ」  にんまりと笑うシガンは、味を回顧するように特徴をつらつらと並べ出した。ネイルが綺麗な女の人。生真面目な眼鏡をかけた中年。痩せぎすの老人。次に詳細な味を話そうとした瞬間、俺は咳き込んで話を止めさせた。趣味が悪いし、興味も無い。 「むしろお前の方が変だぜ。折角の食料を食わねえなんてな。胃でも痛いのかい?」 「……カエデは食料じゃねえ。仲間でもないが」 「量も質も担保されてるのに、勿体ないねえ」  呆れた様子で刀を弄り出す。  怒って追い出すのは得策では無い。冷静になれと脳内に問いかける。自分は、判断を間違えない。麻酔銃で三百発撃ち込まれた日を思い出せ。突発的な行動は身を滅ぼすと知っただろう。 「それでだ。ケンジンは龍涙を知ってたか?」 「いいや。誰からも聞いた事が無いな」 「やっぱりか。……なあ、おかしくないか。龍ですら知らない情報をアイツらが握ってるってのは。何か裏があると思わねえか?」 「まあ確かにそうだが……学者が解明でもしたんじゃねえか?」  龍涙の存在が実証されているなら必ず前例がある筈だ。その噂すら流れてこないとなると、秘密裏に龍涙についての実験でも行われていたか、情報統制でも行われていたのだろうか。 「これは本当に勝手な予想だが、コミュニティの奴らが怪しいと俺は踏んでる。事実、二十年前まで連絡が取れてた奴らは軒並み音信不通だ」 「……ミシュルもモネルミもか?」 「ああ、全員だ。龍を殺せるのは龍だけ。大規模な食い合いが起こったか、何か後ろめたい事を抱えてるのか、真相は分からんが」  もし仮にコミュニティが何か企んでいるのなら、俺とシガンを誘わなかったのは正解だろう。俺は曲がった事は大嫌いだし、シガンは口が軽すぎて秘密なんて隠せる訳が無い。
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