(一)

1/3
181人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ

(一)

 部屋に携帯電話の着信音が鳴り響いた。 「お、ついに来た!」  福永修一はそう言って、自分の父である福永修司の方を見た。 「いやこれは携帯の音よ」  本革ソファで修一の隣に座る福永美幸が言った。 「すみません、私のです」  そう言ったのは、美幸が座るソファのローテーブルを挟んだ向かい側の黒の本革ソファーで、美幸の父親の隣に腰掛ける背広姿の高井戸文彦だった。彼はすぐに携帯を背広のポケットから取り出した。 「ほらあ」 (続く)
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!