『魔導士ルルリェの手記』③

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『魔導士ルルリェの手記』③

 かつて、人形劇の街という〈作り物〉の町を訪れたことがあるわたしは、ここもそういう類の場所なのだと、己を納得させることができた。  何者かが、何らかの目的で子供だけを集めた街。  ここが宝の在処だと確信を抱いたわたしからすれば、目的は明白だ。宝を守るため、以外に何が考えられようか。  そしてこの〈エフュー〉という少女が、街の謎を解く〈鍵〉なのだろう。  エフューという少女は、他の子供らとは明らかに異彩を放っていた。  往々にして子供というものは、一つのしるべとして、親なり身近な大人を目で追いかけるものだ。ところがこの歪な地において、住人である子供らの眼差しはエフューに向けられているのだ。  彼女が特別優れた容姿をしているとか、頭一つ抜きん出ているとか、そういう類の羨望の眼ではない。  彼女のすることが正しい、と──誰も彼もが信じきっている様子なのだ。  そのおかしな様相に、エフューは気付いていないようだ。少女自身、他の子供らと変わりない、住人の一人であると疑っていないのであろう。  ならばわたしは、少女のその純心を利用させてもらう。  わたしには、王より授かりし大切な任があるのだ。何としてでも、宝を手中に収めねば。
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