19人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
「奏橙が“夏フェス行こう”だってさ」
目が合った途端、開口一番に言われたのがこれだった。
「……へ?」
「明後日、渋谷に午後5時半集合。遅刻厳禁。以上、バイバイ」
呆気にとられる私を他所に、千弦先輩は、まるで教科書を読んでいるように淡々と言葉を連ねたかと思いきや、唐突に切り上げて背を向けた。
「ま、待ってください!」
「あ、会場とか詳細は後でLINE送るから、確認しといて。じゃ」
「えっ、あのっ、ちょっと……!」
ワタワタしながら呼び止めても、きれいにスルーされてしまった。
スマホを片手にスタスタ歩きながら、器用に人だかりをすり抜けていく線の細い背に、小さくため息をつく。
──あぁもう……それどころじゃないのに。
扉と黒板に挟まれた掲示板にもたれかかって天井を仰いでいると、待機していた光希と星夏がザザっと素早く駆け寄ってきた。
「千弦先輩、何て?」
「それが……」
助けを求めるように光希を見上げた瞬間、タイミングを図ったように、ピロンと通知音が鳴った。
スカートのポケットからスマホを取り出して、画面を見ると──。
最初のコメントを投稿しよう!