#01 隣のソレイユ

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#01 隣のソレイユ

 6限目の終わりを告げるチャイムが鳴り響くと、私の心はいつも浮き足立つ。それは秘密の放課後が始まる合図だから。 「はいはい、ショート始めるよ。席着いてー」  いそいそと、靴下を部活用のそれに履き替えるテニス部の女子たちに、置き勉するテキスト類を授業の時より真剣な顔で選んでいる、眩しい陽キャ男子たち。  橙陽(とうよう)高校の1年E組という重箱に詰め込まれた私たちは、みんな色も味も違うけれど、ひとつだけ大きな共通点がある。それは──。 「、頼むから巻いて!」 「巻いてるっての。いつも5分ぴったりで終わらせてるだろ?」 「今日は5分シリーズじゃなくて、3分クッキングでいこう! ほら先生、早くしないとCM来て“ユウナンデス”始まっちゃう!」 「癖の強い急かし方だな、おい」  夕方ヒゲならぬ夕方天然パーマ──この時間になるといつも戻るらしい──をふわふわ揺らしながら、けらけら笑う、“かみやん”こと神谷(かみや) (ひじり)先生が大好きというところ。  放課後前のSHR《ショートホームルーム》──略して“ショート”──の空気は、担任の先生によって結構変わる。らしい。いつも眩しいあの人が言っていた。  私はまだ1年目が始まったばかりだから、分からないけど。
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