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 薄暗い廊下を照らしながら、相変わらず肌寒い学校を歩いていく。僕は並んで歩く男に目を向けた。 「――そんな話をして、俺を怖がらせようとするなんて、お前、悪趣味だな」  そう言って、飯島は隣を歩く僕を見下ろす。彼は気崩した制服のポケットに手を突っ込み、肩をすくめた。  呆れたように片口を上げて苦笑しているが、心なしか顔色が悪い。 「飯島って、こういう話は苦手だった?」 「苦手というか、普通は嫌だろ。死んだ同級生の怪談とかさぁ」  はは、と、平静を装うように笑った飯島の声が、薄暗い廊下に消えていく。 「でも、怪談なんかじゃないんだよ。僕は今でも、たまに山田と夜の学校で話してるんだ。あいつ、最近は怯えることもなくなってきてさ。この前なんて、二人で夜通し、ゲームなんてしちゃって」  廊下に向けていたスマホで、僕は自分の顔を照らした。飯島は「ばか! やめろよ」と、肩をはねさせ、僕から距離を取るように飛び退く。その反応が面白く、彼に顔を近づけてみると、軽く頭を小突かれた。 「ほら、あいつ、ゲームとか好きだっただろ。バレー部じゃなくて、ゲーム部でもあればよかったのにって言ってさ」 「……そうだったか? よく知らないからさ、俺は。別に友達でもなかったし」  飯島はあたりに視線を彷徨わせ、「気味が悪い」と、吐き捨てるように言った。 「怪談だけじゃなくて、暗い場所とか苦手だったりする? だとしたら、よく僕に着いて来てくれたよな」 「まあ、興味本位ってやつだよ。同じ部活だったやつが、学校で化けて出るなんて、やっぱり気になるだろ」  からかわれたと思ったのか、飯島は不機嫌そうに口をとがらせて答えた。
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