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「山田もきっと喜ぶよ、飯島と会えて」
もう一度スマホで顔を照らすと、また頭を小突かれた。
「だから、そう言うのやめろって。お前、性格悪いぞ」
飯島とふざけながら歩いていた僕は、廊下の角で立ち止まる。
部室のドアをスマホで照らすと、飯島がドアノブに手を伸ばした。
軋んだ音がして、建付けが少し悪いドアが開く。昼間とは違う、冷たい夜の空気が廊下に流れ出てくる。
「それにしても、戒田って、山田と仲が良かったっけ? いやそれはないか、あいつは友達なんていないもんな」
部室に入ると、カラ元気なのか、上ずった早口で飯島は話し出した。
「友達とは言えないかもしれないけど、同じ部活にいた仲間だったからね」
僕は部室を見回し、肩をすくめる。灰色のロッカーが、ライトの明かりで白く光っている。
「部活? お前、バレー部じゃないだろ」
「3日だけ、バレー部に入っていたよ。春先にさ、覚えてない? 僕って三日坊主だから、今は帰宅部だよ」
飯島は僕と話しながら、部室の電気を点けようと、壁にあるスイッチを押した。何度押しても点かないようで、彼は舌打ちをして近くのゴミ箱を蹴った。
「そんなに大きな音を出すと、山田が怖がるだろ」
「だから! そういうのやめろって!」
飯島は目を細めてにらむ。それも一瞬のことで、すぐに彼は気まずそうに頭を掻いた。
「……怒鳴って悪い。やっぱり気味が悪くてさ」
「でも、ここまで着いて来てくれたってことは、飯島って結構、友達想いなんだな」
「だから友達じゃないって。そういうお前は、結構、おせっかいだったんだな。3日だけ同じ部活だったやつを気にかけるなんて、普通はできないだろ」
「お兄ちゃんにあこがれる一人っ子だからね、僕は。おせっかいな一面が、あったり、なかったり……」
僕は適当に飯島に答えながら、ロッカーに近づいた。
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