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「――山田、ロッカーから出られるようになったんだ。でも、飯島とかくれんぼを続けているからって、狭いところによく隠れててさ。たとえば、そのゴミ箱とか」  僕が言うと、飯島は自分で蹴飛ばしたゴミ箱に目を向けた。 「あいつ、次は自分が鬼をやりたいって、言っててさ。だから僕、あいつの手伝いをしてやろうと思ったんだ」 「何度も言ってるだろ? そういう嘘を言うのはやめろって。俺、冗談とか、あんまり好きじゃないんだわ」  倒れたゴミ箱を見て笑った飯島は、僕の首にかけた手に、力を込めた。 「そうなの? 飯島って遊び好きだから、冗談も好きなんだと思ってた。……ほかのやつらは、もう山田が捕まえちゃったから、最後は飯島だけだよ」  僕が言うと、飯島は「え?」と、つぶやいて眉を寄せた。  並んだロッカーが突然、ガタガタと震えだす。 「いいじまー、助けてくれー」 「いいじまー」  聞こえてきたのは、数人の男子生徒たちの声だ。彼らの声に、飯島は僕の首から手を離す。その手は、ぶるぶると震えていた。 「飯島、お前が遊びを続ける限り、山田も遊ばないといけないんだ」  僕は彼の背後に視線を向けた。その視線を追い、飯島は顔を動かす。  倒れていたはずのごみ箱が、飯島の後ろに立っていた。 「飯島くん、あーそぼ」  バケツの中から出てきた両手が、飯島の足を掴む。 「やめろ、やめてくれ!」  叫んだ飯島は、手だけでなく、全身を震わせ、腰を抜かした。その拍子に、ごみ箱が倒れた。ゴミ箱の中から、落ちくぼんだ山田の両眼がのぞく。  次は彼が隠れる番だ。  足を掴まれた飯島は、そのままゴミ箱に飲み込まれていった。
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