契り

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 二人は京から大阪へ向かった。大阪には以前から哲夫と親しくしており、信頼できる者がいたためである。時々であったが、仕事の関係で親交があったのだ。  途中で途中で、川へ着くと。岩場で休憩したのだが、房江は草履の紐が切れて裸足で走ったため、足の裏は傷だらけだった。あまりにも必死で走って逃げてきたので痛みは感じなかったのだ。しかし、激痛が房江を襲った。 「痛い、痛い」 「どうしました?房江さん」 「足の裏が……」 「ああ、これは酷い。川の水できれいに洗いましょう。しばらくここで休まなくては……」 「でも、急がないと見つかってしまいます」 「それでは、傷口を洗ったら、すぐに逃げましょう。私の背中に乗ってください」  哲夫はそう言うと、房江をおんぶして、川岸を歩き始めた。房江は痛みと不安とで、涙が取り留めもなく哲夫の肩に流れ落ちた。  いつの間にか房江と哲夫は、夕闇に襲われていた。哲夫は灯りを探しながら歩いた。 「房江さん、もう少し行ったら宿屋があるはずです。今日はそこで過ごしましょう」 「はい……」  房江の声は涙声であった。哲夫は必死で宿屋まで向かい、なんとか宿屋へたどり着いた。宿屋は小さな宿屋であり、宿屋へ着くと受付の女中が慌てて声をかけた。 「どうしましたか?足から血が流れ落ちているではありませんか」 「いえ、いろいろ事情がありまして、ここで手当はできないものでしょうか?」 「わかりました、すぐに手当しましょう。しばらく傷が治るまで、ここへお泊りください。料金はかまいませんので」 「いえ、明日になったら、出発しないといけません」 「大丈夫でしょうか」 「はい……」  哲夫は痛々しく答えた。一刻も早く大阪へ向かわなければ、女将や父親が追ってくるのがわかっていたからだ。時が一刻一刻、迫っていたのであった。  房江と哲夫はその夜は二人でここまで来た事を振り返った。これでよかったのだろうかと、房江は哲夫に話した。哲夫は複雑そうな表情を浮かべながらも、哲夫は優しく抱きしめた。そして、初めて二人の夜を迎えた。  それは、房江はどこまでも幸せでいっぱいで、哲夫は優しくて温かい肌に包まれ、房江も哲夫の優しさに包まれた。幸せな時の始まりでもあった。
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