ウランさんの横顔

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 蝉の大合唱よりも騒がしい休み時間。二年三組の教室にて、僕は自分の席で「あるクラスメイト」の姿を観察していた。 「ねえねえ羽蘭(うらん)ちゃ〜ん!」 「どうしたの?気分良さそうだね」 「昨日映画見に行ってきたんだけどね……」 「うんうん」  自慢話を始めた自称・陽キャ女子の生徒の向かいにいるのは、皆からすればクラスのマドンナ的存在である羽蘭さん。「あるクラスメイト」とは彼女のことだ。  一見すると人気者で誠実で賢い羽蘭さんと、基本ぼっちで臆病で文章を書くのが得意なこと以外取り柄のない僕。正反対で殆ど交わらない僕達だけど、僕は羽蘭さんと秘密の約束をしている。  僕しか知らない、羽蘭さんの「顔」に関する約束を。
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