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山小屋までは馬に乗りゆっくりと歩いた。男性二人が歩きだったためだ。
「僕はヨンノと言います。こっちは従者のシド。幼なじみみたいなものですけど」
「私はゼビーです。国を離れ、遠い異国に行く途中だったので助かりました」
「どこに行かれるのですか」
ヨンノは興味津々に瞳を輝かせている。
「それが、まだ決めかねていて……ところでヨンノさんは、四番目のお子様だからヨンノさんなのですか」
「たまに聞かれるのですが、残念ながら二番目です」
「そうなんですね。お国はどちらです?」
「ヒュービックですね」
「ヒュービック!大きな港町のある国ですね?一度行きたいと思っていました」
ゼビーの声は大きくなる。大きな港町であるがゆえに、異国の民が集う場所でもあった。
「ゼビーさんはどちらの国ですか」
「ランダリンです」
「ほー、ランダリン!ランダリンもきらびやかで美しい国だと聞きますよ。豪華絢爛な国だと」
ゼビーは苦笑する。
「それはそうでしょうね。後先考えず、民の血税を湯水のごとく使う王族たちばかりなので」
ヨンノとシドは驚きで目を見開いた。まさか元国民からそのような言葉をもらうとは、想像もしていなかったようだ。
「あの国は今のままではいずれ破滅するでしょう。それで逃げ出してきたのです。薄情者だと思われますか?」
「いえ……それならちょうどいい。近々帰国予定なのでご一緒しませんか?」
「え、町の食堂はどうなるんです?」
「どうにもなりませんよ。元々お手伝いみたいなものでしたから。ただ、事情があって、今すぐの帰国はできません。もうしばらくは食堂の町にいていただくことになりますが」
「大丈夫です。待ちます!私も食堂で働きます。用心棒などは雇っていませんか?」
ヨンノは顔いっぱいに笑う。
「ははは、用心棒は雇っていませんが、普通に働いたらいいですよ。あなたならすぐ看板娘になれます」
「あー、そういうのはもういいんです。騎士を目指しているので」
ヨンノとシドはまた目を丸くした。ゼビーに出会ってから驚きの連続だった。
「それは素敵な目標ですね」
ヨンノが微笑む。
「ホントですか?家族は呆れていますけどね。ありがとうございます。何だかヨンノさんに言われて力が湧いてきました!」
ゼビーの笑顔を見て、ヨンノも同じ気持ちになった。最近は憂鬱な出来事ばかりだったが、彼女が一筋の光を見せてくれたような気がした。
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