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俺と離婚できて幸せだと言った泉の言葉に迷いも躊躇もなかった。 実際、俺に対して未練は感じられなかった。 俺よりも若々しく今風の風貌をした男が現れると夫だと紹介された。 その男の腕の中には泉に面影が似ている子供が抱かれていた。 男と並んで立ち去る泉はとても幸せそうに見える。 俺が逃してしまった光景だ。 泉を愛していた。 だけど、母親からの干渉から逃げるために泉を犠牲にしたのだ。 その罪悪感から舞に逃げて・・・ 後悔の涙が止まらなかった。 ゆっくりと立ち上がると車に乗り込んだ。 何もやる気がおきず、ぼんやりと過ごしていた。 退職金から両親に金を返してもまだ残りはある。 しばらくは何もしない事もありかもしれない。 鏡に映った人物に違和感を感じた。 「誰だ?」 頬から顎にかけて手でなぞる。 「俺ってこんな顔だったのか?」 舞との結婚生活で気持ちが安らぐことは無く、泉と再会してからは泉のことで頭がいっぱいだったし、不摂生だったことは否定できないが、頬がこけ、目も落ちくぼんでいる。 こんな顔だっただろうか?朝までは精かんで男前とまではいかなくてもそれなりの顔をしていたはず。 いや、これが今の俺なのか? 何もかも無くしてしまった。 生命保険を解約すればある程度の解約金があるはずだし、少し旅行にでも行くのがいいかもしれない。 それから仕事を探して一からやり直そう。 退職日に通帳の記帳をしに行くと退職金が支払われていた。両親に借りた金を返してもまだ残っている。 一週間くらい暖かいところにでも行ってゆっくりしよう。 行く場所を考えるのも楽しいだろう。 マンションの集合ポストに親展と書かれた封筒が入っていた。 「まさか・・・・な」 封を開けると四社目の消費者金融からの督促状が入っていた。
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