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マンションに帰るのは苦痛だ。 舞は部屋が散らかっていても自分がいるソファの上だけ片付いていれば気にしないという人間で、大体はソファに寝転がってペディキュアというのか足の指にマニュキュアを塗っている。 手の爪はわざわざサロンに行ってゴテゴテと飾り付けていた。 そもそも指で料理も何もないが、一日中何をしているのか疑問でならない。 「お帰りなさーい」 顔も上げずにそう言うとさらに 「明日友達とランチに行くからお金かカードちょうだい」 とスマホをいじる指だけを動かしながら言った。 初めの頃は生活費が必要だと言うことで、クレジットカードを渡していたが無駄遣いが酷く、取り上げて必要な時にお小遣いを渡していたが、流石にそれもキツくなっている。 泉と生活していた時は、部屋は常に綺麗に整頓されていて、会社から帰ってくると美味しいご飯が用意されていた。 「働いてる俺はスーパーの弁当で我慢してるんだ、いい加減ランチとかやめてくれよ。晩飯だって朝飯だって作ってないだろ。それに部屋も汚い。何もしてないんだから掃除くらいしたらどうだ」 「うるさいな。ババァの小言で精神的に参ってんの。それくらいの気晴らしいいでしょ」 舞はスマホから顔を上げる事なく不機嫌な声色で返事をした。 「給料も少なくなったし、貯蓄だって僅かになってきたんだ。家でぐうたらして高いランチを食うくらいなら仕事をしたらどうだ」 舞は立ち上がると「働きたく無いからおっさんでも金のありそうなあんたと結婚したのに、ふざけんな」そう言うとクッションを俺に投げつけてからベッドルームに向かった。 こうなると、また部屋がメチャクチャになり下の階の住人からクレームがくる。 舞とは9つ違うが、キレるたびにおっさんとか言われ、クローゼットのものをぶちまけて地団駄を踏むから手がつけられず、初めはお小遣いを渡してなだめていたが、面倒になりそのまま放置したら階下の住人が怒鳴り込んできて玄関先でお叱りを俺1人で受けることになる。 本当はソファで横になって体を休めたいが、階下から来るであろうクレームへの対応も面倒くさいし、昼に泉に会った事で舞と泉の違いをまざまざと思い知らされて、家にいるのが嫌になり部屋を出た。
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