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マンションに帰っても汚い部屋と不機嫌な舞の顔を見るのが嫌で結局実家に泊まった。
舞が面倒くさい事を言い出したり、行動をした時、まともな夕飯が食いたい時は実家に避難している為、着替えなどの必要な物も実家に置いてあった。
スーツに袖を通す時に泉を思い出した。
このスーツは泉と結婚していた時に購入したもので泉が生地を見立ててセミオーダーで作ったものだ。
4年前に作ったものでも痛みはほとんど無い。
舞は泉が見立てたものをマンションに置いて欲しくないと言って捨てようとしたからスーツや服などは皆、実家に持ってきていた。
舞のセンスは舞と同じ歳の者にならいいが、俺には少し合わないデザインが多いし役職から外れたと言ってもかなり安っぽかった。現に、安いのだが、結婚したばかりの時は浮かれていたからそれでもいいと思っていた。
今思えば、不倫がバレて降格になっているのにヘラヘラと似合わないスーツを着ているとか痛い人間に見えていたことだろう。
昼を少し過ぎた頃にスーパーへ行き泉がレジに入っているのを確認してから弁当コーナーに向かう。
割引シールの付いているのは無いから値段を見ながら腹持ちの良さそうな弁当を選び泉が立っているレジに並んだ。
読み取り機にバーコードを読ませている泉に「少し話をしたいんだけど」と声をかけたら「1番の精算機でどうぞ」とだけ答えて、次の客への対応を始めた。
仕事中に言われても困るだろうし帰る時に声をかけてみることにした。
5時くらいに終わるだろうから帰社を少し遅らせて5時にスーパーに行ってみると泉はレジにいなかった。
念の為、店内を見てみたが姿を見付けることはできない。
次の日は2時くらいにスーパーに行ってみたらレジに泉を見付けることが出来て、お弁当を手渡してから「今日は何時まで仕事がある?」と聞くと「1番の精算機をお使いください」という返事しか返ってこなかった。
帰社ついでに4時にスーパーに寄ってみるとすでに泉はおらず、3時までかもしれないとあたりをつけた。
実家に帰ると母親から泉と連絡が取れないかとしつこく聞かれ、せっかくうまくいきそうなのに邪魔をされては困る為、母親から逃げるためにマンションに帰ると舞はおらず部屋はかなり荒れていた。
明日は土曜日で休みだからと重い腰を上げて部屋を片付け始める。
散らかっている服をまとめて洗濯機に入れると飲みかけの数本のペットボトルの中身を捨てて濯ぐとラベルを剥がし、キャップを外して潰してからビニール袋に入れていく。
どうやったらここまで汚せるんだよ。
こんな部屋に泉を誘えないじゃないか。
気がつくと1時を廻っている。
舞はどうしたんだろう?
金遣いが荒くて、以前はクレジットカードを渡し、生活費としての現金も渡していが今は生活費として3万円を手渡している。
電気ガス水道は口座からの引き落としだし、家のものを舞が買うことはないから単に小遣いを渡しているようなものだ。
どうしてこうなってしまったんだろう。
俺は泉を愛していた。
だけど疲れて帰っても母さんのことで愚痴が増えてそれを聞くのが面倒だった。
それでつい舞に逃げただけだった。
元を辿れば母さんが悪いんじゃないか。
次はもう母さんの勝手にさせないし、母さんが何か言ってきたら今度こそ泉を守ってやろう。
ある程度部屋を片付けるとシャワーを浴びてベッドに入った。
朝、目が覚めると明らかによそ行きの姿のままの舞がベッドの中で眠っていた。
タクシーで帰ってきたんだろうか?それとも男に送ってもらったとか?
それならそれでいい。
泉と再会できたからにはもう舞には興味もないし、舞といる必要がなくなったのだから。
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