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スーパーの握り寿司を二パック購入してマンションに帰ると舞はソファで寝転がっていた。
「お腹すいたんだけど」
ため息をのみこんでお寿司のパックを一つ渡してからダイニングに行きお茶を淹れていると
「私の分も」
と言っている舞にイライラするが、ここで何かをいうとまた不貞腐れて面倒なことになる。
お茶を淹れてリビングのテーブルに置くとダイニングに戻って舞から離れて寿司をたべた。
泉の事を思い出す時に舞の顔は見たくない。
すごく旨いって事はないが、まぁこんなもんだろうと思いつつ食べてシャワーを浴びてからリビングのソファに座ると隣で舞がローラーで顔をコロコロとしている。
「明日も会社だから」
「ふーん」
特に興味もなさそうな返事が帰ってきて、昨夜はどうしたのかツッコミたい気持ちになったが、今は少し泳がしておこうとぐっと抑えた。
母さんにラインで[泉が戻りたいっていったらどうする?]という言葉を送るとすぐに着信があった。
ラインで返してくれればいいことなのに、音声だと興奮した母さんの声が漏れまくる可能性があるため、舞に聴こえないようにベッドルームに向かった。
『泉さん戻ってきてくれるの』
「そのつもりだけど、まだ問題があるからすぐは難しいかも」
『あの女よね、私にまかせなさい。あんたは泉さんに誠心誠意謝るのよ』
話が長くなると困るから「わかったよ」と言って通話を切った。
思った通り声がデカくて舞に聞かれていないか不安になりドアの付近を確認した。
母さんには舞を追い出してくれればいいだけで、それ以上は関わらないようにしてもらわないと二の舞になってしまう。
今度こそは泉を守りたい。
翌日の日曜日も夕方まで居たが、結局スーパーで泉の姿を見かけることがなかった。
泉は土日は休で仕事をしているのは平日だけなのかもしれない。
だとしたらあまり稼げてないんじゃないか?
もしかしたら掛け持ちをしているのかもしれない。
早く話をして助けてあげたいという気持ちが大きくなった。
舞が見立てたというか吊るしのスーツを選んだだけだがそれらのスーツはもう着るのをやめよう。
泉が仕立ててくれたスーツに袖を通すと颯爽とマンションを出た。
もちろん舞は朝食を用意するでもなくまだベッドの中で惰眠を貪っている。
妊娠が嘘だと知らされた後は舞とはしていない。
する気が起きず自分で処理をするようになった。
舞も特に誘っても来ないし面倒がなくていいと思っているが制服を着てレジに立っている泉はなんとなく新鮮で抱いてもいいと思った。
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