蜂蜜の味

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俺の後ろに立っていたマナはニコニコと笑顔を浮かべ、自分が想像していたよりも遥に可愛いかった。 漫画なら背景には花が咲き、美人の一言で表せる。 「おっと!これは邪魔になりそうだな!レイ!ここは引き下がろう!!」 「え!?」 俺はそんなリュウイチの声に驚かされた。 「あ!そうだね!!マナ!ここどうぞ!」 そう言ってレイも座っていたベンチから起立し、俺のとなりにマナを座らせた。 「え?あ、ありがとう…」 マナは自分の髪を揺らしてベンチに座る。 やはり、可愛い… 胸の奥がまたもや締め付けられ、顔が赤く染まるのを明確に感じ取れた。 「キリヤ、大丈夫?」 俺はその透き通った綺麗な声にハっと目を覚まされた。 「え、えっと…」 ある考えが頭を通り過ぎた。 それは告白するという考えだ。 ここで俺は初めて二人の話を聞いている内に好きか溢れていることにいつの間にか気付いた。 「そのー、本当に大丈夫?」 俺は慌てた返事をした。 「え、えっと!!大丈夫だよ!!それより、その…話したいことがあるんだ…!」 俺は勇気を振り絞る。 キョトンとした彼女はすこし、かしこまって次の言葉を待っているようだった。 「そ、そのさ、え、えとーなんだろな…」 俺は緊張のあまり言葉が喉に詰まる。 「好き」という感情を口に出す何てことは恐ろしく怖い。 もしも、マナが俺のことを好きじゃなかったら… そんな恐ろしい考えが頭の中を通り過ぎる。 でも答えは単純。 気まずくなる。 それだけだ。 次の日から何を話せばいい? 次の日から目が合ったら何をすればいい? そんな考えが俺の脳内を駆け巡る。 でも、目から飛び込んでくる景色は俺の好きな人、マナがちょこんと座り、俺の返事を待っていた。 「マナってキリヤのこと好きなんだって!!」 ふと思い出したのは、レイが言ったその一言。 その時、俺は嬉しさよりも衝撃が走った。 なんでこんな俺なんかに? そう思ったんだ。 「その優しいところが好きなんじゃないのか?」 次に思い出したのは親友、リュウイチの台詞だ。 その声が掛けられた時、たしか木の上から降りられなくなった猫を助けたときの台詞だ。 俺は地味に優しいと評判で、女子からの評価も高かった。 「キリヤって優しいよね。」 マナからも掛けてもらっていた。 目の前のマナトは凛とした表情でベンチに座っていた。 そんな彼女を前に俺の心の中は本当の想いで埋め尽くされていた。 ただ、本当のことを言えば良いだけ。 心の中を言葉にするだけ。 それだけなんだ。 そう考えると、俺は自然と口が開いていた。 「マナ!!俺!マナのことが大好きなんだ!!ずっと前から大好きなんだ!!だから俺と…俺と付き合ってくれ!!!」 自然と出た言葉からマナが喋るまで。 その空白はとても長いように感じた。 そしてついに 俺の脳内に 彼女の言葉が 届いた。 「ありがとう。」 そんな一言に俺は救われ、もう、天に召されるかもしれない。
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