蜂蜜の味

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「でも、ごめんなさい」 違った。 「その私、今付き合っている人がいるの…だから、ごめんなさい…」 彼女はその言葉を吐き捨てるとすぐにベンチから立ってその場を去った。 マシンガンの用に放たれた心を突き刺すような言葉の数々は肌では感じられない「痛み」を感じるまでに少し、時間を要した。 「え?」 彼女が居なくなった時、俺はそう呟いていた。 彼女の去った方を見ると二人の影があった。 頬を伝う水の感覚。 湿った瞳は立ち去る彼女を明確に捉え、走るように立ち去る彼女を最後の最後まで見つめ続けていた。 そして、マナが通った通り道の隅に、見慣れた影が二つあった。 嘲笑うようなその顔には少し身に覚えがあった。 よく見てみると、その二人は俺の親友と、マナの親友の顔だった。 でもその二人の顔は今までに俺が見たことのないほど醜悪な笑み浮かべていた。 どういうことだ…? なぜ涙を流した俺を眺めて笑う…? 俺は理解できずに膝を床に落として考えていた。 突如、マナとのある会話を思い出す______ 「ねえ、リュウイチくんって好きな人とかいるのかな?」 呟くように言われたその一言は、ある日の放課後の時の話だった。 その時はまだ、マナのことを異性としてはあまり見ていなかった時の話だ。 一瞬かつ小声で言われたので俺は 「ご、ごめん聞こえなかった」 流石に聞き間違いかな?と思っていた。 でも、その予想はどうやらあっていたらしく、 「え、えと、そのーリュウイチくんって好きな人とかいるのかな?」 今度ははっきり聞こえた。 リュウイチの好きな人?そんなの聞いたこともない。 でも、それよりも… 「そ、そんなに気になる…?」 夕日のせいか彼女の頬は赤く染まっているように見えた。 「え!い、いや!!別に気になるとかじゃないよ!!!」 「ふーん。でもまあ、いないと思うよ」 「そ、そうなんだ…」 マナは俺の言葉を聞くと少し落ち着いた様子になった。 その時の表情は安心したような、がっかりしたような顔だった。 今思ってみたら、もしかしたらそういうことなのかもしれない。 影の一つが俺の方に近づいてきた。 「気分はどうだ?」 笑いを含んだその声は悪魔のような言葉を放った。 「全く、お前みたいななんの個性も無い様なやつがさあ、目が合っただけで自分の事好きとか思うほど調子乗ってるからこんなんなるんだよ」 そんな言葉を呟くと俺は勢いよく地面に膝を落とし、手を地面に付けて、地面についた涙のシミを見つめていた。 「そ、そんな…そんな…!!!」 俺は地面に涙のシミを増やしていると頭のすぐ横から声がした。
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