隣にいるのは

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 私と桃ちゃんが慌てて教室に戻ってきてからそれほど時間も空けず、湊人も教室に戻ってきた。そしてすぐに授業の時間になったから、桃ちゃんとも話せないまま。  湊人はこれといって変わった様子はなかったけれど、あの時、くるっとこちらへ向いた時の川原さんが、楽しそうに笑っていて。普段のしっかりした大人っぽいイメージと違ってかわいかった。  それが湊人と話していたからだと思うと、なんだか胸がキリキリする。  人目をさけるようにして、なんで会っていたんだろう?  なんで川原さんはあんなに楽しそうだったんだろう?  なんの話をしていたんだろう?  先生が国語の教科書の内容を説明しているけれど、内容なんて全然頭に入ってこない。  黒板を見なくちゃいけないのに、右斜め前の湊人の背中をずっと見てしまう。どんなに背中を見たところで、心の中なんてのぞけないのに。 『とられちゃうよ』  桃ちゃんの言葉が、ぐるぐる、ぐるぐる。  その言葉の意味が、わかった気がした。  川原さんが湊人と付き合ったら……そんな想像をさっきからしている。  湊人の隣に私じゃない誰かがいるのを、はっきり『イヤだ』って、思った。  きゅんでもトキメキでもなく、モヤモヤしてもどかしい。  もっとキラキラしたものだと思っていたのに。  それでも、自分の中にあるぐちゃぐちゃな感情が向かう先は、湊人なんだって。特別なんだって、気がついた。
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