隣にいるのは

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「雪、やんじゃったなぁ」  昼休み、教室の窓から外を見れば、朝の雪なんて嘘みたいに晴天だった。  少し校庭がぬかるんでいるくらい。雪は夢だったんじゃないかな? 「莉ー子っ」  ぼぉーっと外を見ていたら、前の席に友達の桃ちゃんがぴょんと腰かけた。 「桃ちゃん。なんか楽しそうだね」 「えへへっ。さっきね、みなみちゃん達と来週の週末の約束してたんだけど、莉子も一緒にどう?」 「週末? どっか行くの?」 「違うよ―っ」  うふふっと口元を手でかくして、私の方へと身体を近づける。 「バ・レ・ン・タ・イ・ン!」  息を吹きかけられたのかと思うくらいの小声で、だけどその声は弾んでいた。  思わず私たちは至近距離で秘密の話をするように声をひそめる。 「え? 桃ちゃん、あげるの?」  桃ちゃんは同じクラスの米沢くんの事が好きだと、修学旅行で教えてくれた。その時は見ているだけでいいんだって話してたけど。 「だってさ、もう卒業じゃない。中学に行ったら生徒数が増えて、同じクラスになる確率だって低くなるし、接点なくなるかもしれないじゃん」 「そっか……そうだね」  私達の通う予定の中学は、近隣の小学校二校が集まることになる。  しかも、向こうの小学校の方が児童数が多い。  だから一学年が今の倍以上になるんだ。 「でね、来週末に私の家でバレンタインチョコ作ろうってみなみちゃんと話をしているの」 「みなみちゃんも好きな子いるんだ!」 「うん、隣のクラスの本田くん」  本田くんは少年野球チームに入っているスポーツが得意な男の子。みなみちゃんだけじゃなくて、ほかにも本田くんのことを好きだって言っている子がいるのを聞いたことがある。
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