隣にいるのは

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 桃ちゃんの問いかけに、言葉が出てこない。  だって、なんとなく。  本当になんとなく。昨日、湊人に告白されて気づいたっていうか。  あれから湊人みるとドキドキするし、目あわせられないし。  でも冷静に考えたら、これって告白されたからその気になっちゃったのかなとか。  恋って、好きって……。 「……よくわかんない」  私の言葉に、桃ちゃんは肩をすくめた。 「一緒にいるのが当たりだったもんね。でもね、中学になったらまずクラスが離れるかもしれないんだよ。そして登校班は中学に行ったらないんだからね。湊人くんも莉子も部活はいるかもしれないでしょ? 朝練とかあったら一緒に登下校なんてしないだろうし。今までみたいに一緒にいること、なくなるんだよ。考えたこと、ある?」  登校班がなくなる。  そうだ。中学に行ったら自由登校だ。  集まって登校なんてしない。  ……なんで私、考えなかったんだろう。  桃ちゃんのいう通り、湊人がいるのが当たり前すぎて。  だって今だって下校は自由なのに、湊人がいつもそばにいたんだもん。  湊人と一緒じゃない時間なんて、考えたことなかった。 「あ、もう昼休み終わっちゃう! 莉子、バレンタインもしあげるなら一緒に作ろうね」  慌ただしく桃ちゃんはそれだけ言い残して、自分の机へと戻っていった。  午後の授業、私は完全にうわの空だった。  右斜め前に見える、湊人の背中を見ながら、桃ちゃんの言葉がグルグルと頭の中で回っていた。
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