隣にいるのは

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「莉子! 莉子、莉子、莉子ーーっ!」  お昼休みに入って早々、桃ちゃんが私の机まで勢いよくやってきた。 「どうしたの? 桃ちゃん」 「どうしたの? じゃないの! こっちこっち!」 「って、うわっ! 待ってよ、桃ちゃん」  引きずられるようにして連れていかれたのは、渡り廊下を通って音楽室とか特別教室が並ぶ南棟の三階。この辺りは、お昼休みにあまり人がこないから、校庭のにぎやかさが廊下に響くくらいだ。  その静かな音楽室の前。湊人と、女の子がいた。 「隣のクラスの川原さんだよ」 「あぁ、学級委員の」  児童集会とかでも前に出たりしたことがある、しっかりした子。  背中まであるサラサラのストレートヘアが似合う、かわいいというよりは綺麗な子だ。  そんな川原さんと湊人が、こんなところで何を……? 「さっき給食当番で返却に行った帰りにね、二人が渡り廊下歩いているのが見えたの。だからこれは莉子に知らせなきゃって」  湊人たちから距離は離れているものの、声をひそめて桃ちゃんが状況を話してくれた。  音楽室は突き当りにあって、私たちがいる中央の階段からは離れている。何か話しているみたいだけど、聞き取れない。  川原さんは背中を向いているし、湊人と川原さんの身長が同じくらいだから、川原さんに隠れて湊人の姿はあまり見えない。時折楽しそうな笑い声が聞こえてくる。  わざわざ人目を避けているかのように会っている二人に、なんだかモヤモヤする。こんなところで会わなくたって教室の廊下で話せばいいじゃない。    やがて、くるっと踊るように川原さんが方向転換して、こちらへと歩いてきた。 「あ、やばい! 教室に戻ろう!」  桃ちゃんと顔を合わせて、なるべく足音を立てないように。だけど急いで階段を降りた。
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