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「……さむっ」
朝、布団の中にいるのに、空気が冷えていると思った。身体が思わずブルッと反応する。
寒いな、出たくないな。ずっとお布団の中でぬくぬくしていたいな。
「莉子ーっ! いつまで寝てるの!」
ドン、ドン、と床を踏み鳴らす音。これ、突撃されるやつだ。
はやく起きなくちゃ。
そう思いながらも身体は正直で、布団を握りしめさらに奥へ奥へと潜り込む。
「やーっぱり、布団ムシになってた!」
ノックもせずにドアを開けて、ちょっと笑うように言うお母さん。
「この寒さだからね。そうなんじゃないかと思ったのよ。でもね、莉子。外、見た?」
「……外?」
「雪。降ってるわよ」
「え? 本当!?」
寒さもなんのその。思わず布団から飛び出した。
部屋のカーテンを開けてみれば、庭の木にはうっすらと雪がキラキラかぶっている。
「雪、だぁ……」
いつもより曇り空。ハラハラと舞い降る雪は、同じ景色でも普段と違ってみえる。
「莉子には残念かもしれないけど、お昼前には止むみたいよ」
「そっかー。でもいいよ。今、見られただけで嬉しい」
だって一年に一度降るか降らないかだもん。
今、見られただけでじゅうぶん。
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