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短く済ませるつもりが、思わずダラダラと長くなってしまった。
雪をみると、真っ白な祖母の医院を思い出す。今は何もない。泊まる場所もなくなってしまった山奥の思い出。
夏は夏で白の方が面積多くないか?と感じるほどの星空。網を振れば何匹がつかまるホタル。周回ルートを探り、待ち伏せして捕らえたオニヤンマ。手掴みでいくらでもとれるトノサマガエル。トンボの背中に釣り針を刺し込み、水面を飛ばせて釣るマス。そこらの石が全部無縁仏の墓場。卵から育てあげ、種鳥としてスカウトされ貰われていった鶏。縁起物と財布にねじ込まれたアオダイショウの皮。山を縦に登っていく謎のおばあちゃん。そこらの道端に生えている山菜。テンに荒らされた養鶏場、雉、狐、鹿、熊……。
僕の実家は関東にある。雪は年に三度積もれば多い方という、田舎でも都会でもない町。
そんな僕が故郷と聞くと、祖母の家を思い出す。暮らした訳では無いからこそ、苦労も嫌気もなく良い思い出ばかりだ。かといって故郷と呼ぶのはなんか申し訳ない。祖父母の痕跡はすっかりなくなってしまった。切ないが、僕はほとんど他人だった。あくまで余所の子。
せめてこたつだけ、点けると今も祖父母の匂いが少しする。
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