雪の中

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 雪の中にはつららも埋まっていた。  引くほど太くて長いつらら、誇張でなく当時の僕の身長をゆうに越える大きさ。屋根からぶら下がるソレを雪玉を投げて割る。割れたら掘り起こして地面に叩きつけて更に割る。バラバラになった氷の塊を拾い上げ、別つららに向けてまた放り投げる。何やってんだか、よくも無事に遊びこけ抜けたもんだ。  つららは屋根の上の雪からはえている。今はどうだか知らないが、当時は角度が急な屋根が多かった。その方が雪が落ちるからである。  暖房で屋根が温まると、そこに接している雪が溶ける。ごうごうと音を立てて屋根の上に積もった雪が下に滑り落ちるのをよく見かけた。もしその下でアホな子供がつららなんぞを掘っていたらデス、さもなくばダイである。  雪の中に埋まってしまうと身動きがとれない。また声も届かない。雪かきもそうだが、屋根から雪を降ろす時は一人でやってはいけないと父が言っていた。若い頃、屋根から落ちて首まで埋まったそうだ。因みに山岳部だった父は、積雪でテントを潰され死にかけた経験があるとの事。僕も雪山を登った経験はあるが、まさかテントを張ろうなどとは思わない。山が好きな人は行くとこまで行く、スゴいもんである。
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