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嫁入り当時、祖母は村どころか地域で唯一の医者だったそうだ。実家はなのうての製薬会社。蝶よ花よと育てられたガチガチのお嬢様だったらしい。
医師として様々な経験をつみ、祖父の熱烈なアプローチを受け山奥に嫁いだそうだ。
騙されたと、思ったらしい。
冬場は積雪で孤立するほどの山奥。生粋の箱入り娘は、村から脱出する方法が分からなかったそうだ。
無医村ではそれはそれは歓迎されただろう。訳も分からずちやほやされて、とにかく働かされた。
雪の中を往診して回ったそうだ。
内科医だっつってるのに、開腹手術もしたそうだ。
検死も祖母。雷に打たれた死体は神経にそって焦げるから脊柱にそって黒いギザギザが云々で太ければ太いほど電流がたまるから圧力で目が飛び出て云々と祖母から解説され、僕は今でも雷が怖い。
祖母はなんというか、とにかく医者だった。
祖父が倒れた時も淡々と、じい様はここがこうなったから血をこう吐いてどういうふうに倒れたからもうダメだ助からない。延命は家族の気持ちが決まるまでみたいな所見を冷静に述べていた。祖父が倒れたというところまで僕は受け止められたが、その後にぶつけられた祖母からの説明を聞いてダメだった。チェックリストにマークするように、祖父が死ぬ理由を次々に並べる。だからもう助からない、と述べた祖母の前で「もう勘弁してくれ」と泣き崩れた。
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