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魔王アンノーン
「本当にそれで全てなのだな?」
「はい。嘘偽りはありませんよ」
スコタディは本当に心から驚いた。何故なら正直に話せと言われた瞬間、全てを隠すことが出来ず正直に全てを話してしまったのだから。特段隠すこともないのだが隠しておきたいこともあった。だが、ルシファーの前では隠し事は不可能なようで今回の目的を話してしまったのだ
「俺のスキルに抵抗したとは思えんな。どいつも同じことを言っている。アンノーン様の面会を許してやろう」
どうやらルシファーに連れ去られ尋問され目的が害することではなかった場合のみ面会を許されるようだった
どんな拷問、いや、されたところで痛みを感じないので問題ないのだが、ある程度覚悟はしていたので拍子抜けしてしまった
今回の目的は本当に強さを求めてのこと。それ以上のことはなく隠す必要もなかった。それ故、聞かれたところで何の問題もないのだが隠せないのは正直面白くない。駆け引きを楽しむスコタディにとって駆け引き出来ない相手など関わりたくないのだから
それに、ルシファーは本当に常識人だったようだ。正直に話すまで拷問すると言いつつお茶菓子とお茶を用意し一人ずつ尋問されただけ。あれは脅しだったのかと考えるほどだ。だが、もしかすると恐怖を抱かせることで抵抗を下げる効果を持っていたのかもしれない。そう考えるとベルゼブブの暴走なども必要な事だったのかもしれない
「アンノーン様は今、とある場所にいる。正確な場所は明かせないが異界の魔王と敵対し潰したところなのだ」
「うわぁ」
「ベルマーク様と似たようなことをしてるのですね」
「アンノーン様とベルマーク様は旧友だからな。三人でどれだけ多くの異界の魔王を打ち倒すか勝負してるらしい」
「三人ですか? 後お一人は?」
「ヴェスタリア様だな。幸福のヴェスタリアと呼ばれている御方だ。俺が最も敵対したくない相手でもある」
「その方も8大魔王のお一人ですか?」
「そうだ。第5席でアンノーン様やベルマーク様が言うにはポンコツの天然、そして、敵に回したくないだな。このお三方は三魔協定で結ばれている。8大魔王の中で唯一の協定だ」
知らない魔王がまた一人出てきて情報を聞き出そうとしたがよくわからない情報だけが手に入った
ポンコツで天然なのに敵に回したくない。異名が幸福のヴェスタリア。どんな力を秘めていてどんな人物か気になるが教えてくれるかどうかも疑問。そんなことを考えてるとルシファーは勘付いたのかヴェスタリアについて教えてくれた
「ヴェスタリア様は吸血姫でな。全ての吸血鬼の始祖と呼ばれる方だ。その力は圧倒的で理解しようとしても理解が出来ん。正直に言うと………無茶苦茶なのだよ」
「む、無茶苦茶ですか?」
「わかりやすく言うとだな………」
ルシファーは数秒考えたのち拳をスコタディにスッと向けた。それは顔の正面で止められ当てる気がないのは勿論、攻撃するつもりもないのがわかる。そして口を開いた説明でスコタディは混乱することになった
「貴様ならこの拳をどう避ける?」
「その時の状況で変わりますから一概には言えませんが………今なら右の拳ですので左に避けますね」
「そう。それが定石だろう。だが、どう足掻いても避けられない。いや、避けることによって更なる悲劇が待ってるとしたらお前はどうする?」
「どういう意味です?」
「あの方の攻撃は必中。いや、必中などと可愛い言葉ではすまされんな。右拳の軽い攻撃でさえ必殺の一撃へと変化するのだから。詳しく知りたいのならアンノーン様に聞いてみるといい。誰よりもよく戦っておられる」
そう言われて領主の館まで戻ってきていた一同は地下室へと案内された。そこに転移魔方陣が描かれ十人近くのローブを被った人物たちが水晶に魔力を流し込んでいた。どうやらここからアンノーンがいる場所へと行けるらしいのだ
全員が乗ったところで転移魔方陣は光輝き景色が変わる。そこはどう見ても王の間。その王の間の椅子の上に誰かが座っていてこちらを優しい笑みで見詰めていた
「あ、あれがアンノーン?」
「ミロ! アンノーン様!」
「あっ! あ、アンノーン様?」
八人は歩いてアンノーンのお膝元まで歩いていく。その姿は妖艶で美しく思わず見とれてしまうほど。何よりも優しい笑顔でこちらを見詰め囁かれるように放たれた言葉は心を鷲掴みにするようだった
「いらっしゃい。あなたたちがバブーが言ってた子達ね?」
「ば、バブー?」
「誰でしょうか?」
それは聞いたことのない人物の名前。全員が誰かわからないと言う不思議な顔をしているとルシファーがサポートに入ってくれた
「パブーンのことだ。アンノーン様がバブーと名付けたので我々はそう呼んでるが、領主として威厳がないと言うことでパブーンと名前を変えてる」
「プッ」
「わ、わらっちゃだめですよ」
「スコタディだって笑ってるじゃん!」
「だ、だって………」
「私が付けた名前がそんなに可笑しいかしら?」
その言葉を放たれた瞬間、全員が凍り付いた。すっかり忘れていて油断していたが目の前には最強の魔王がいる。男だと思っていたのに女性だったことに驚きだったが危険な人物が目の前にいるのだ。スコタディも完全に気を抜いてしまいやらかしてしまったことを反省した
「別にいいのだけどね? 私は寛容だから許して上げる」
「あ、有り難う御座います」
「クスッ。そんなに緊張しなくていいわ。何でもミロと言う女の子が強くなりたいって話よね?」
「そうなの! 強くしてよ!」
「み、ミロ! 敬語!」
本当に背筋が凍らせるのが得意な女だと思ってしまう。これでは殺してくれと言ってるようなものだ。慌てるようにアンノーンの顔を見ると笑顔がひきつっている。これはヤバいと思いどうするか悩んでいたらアンノーンの方が動きが早かった
「調子に乗るな」
ミロの目の前に現れ床に頭を叩き付けたアンノーン。先程まで優しい声ではなく何処までも冷たく凍るような声だ。やはりキレてしまった。どうやって挽回しようかと考える隙もなくアンノーンは言葉を紡いだ
「面会を許しただけでも感謝しろ。私を誰だと思ってる? 最強の………」「なにやってんだ? アスモ」
「………」
スコタディの後ろから声がして全員が振り返った。そこには血だらけの女性が立っていて不思議そうにこっちを見ている。アスモと呼ばれた女性は慌てるようにひざまつき頭を垂れた
「も、申し訳ありません! この者たちを試すためにアンノーン様の名を借り騙しておりました」
「ふぅん? なんで?」
「そ、それは………アンノーン様の身の安全を………」
「誰が危険だって? 調子に乗ってんのはどっち?」
「わ、わ、わ、わたくしです」
「そか。もういいからどっか行ってろ」
「はっ!!」
アンノーンと呼ばれた女性はゆっくりと歩きながら近付いてくる。アスモと呼ばれた女性は歩きながら去ろうとする。そして、すれ違った瞬間、アンノーンはアスモを殴り飛ばし吹き飛ばして城を破壊し城下町まで消し飛ばした
「反省しとけ」
純粋なパワー。それだけでこの威力。これが最強の魔王と呼ばれる女性。ギルドJKのメンバーは全員震えてしまった。もし、怒らせたら? そう思うと恐怖でしかないのだから
「ごめん!! アスモも悪気なかったんだ! あれで許してやって!」
ミロに頭を下げて両手を合わせて謝るアンノーンを見てミロは呆然としてしまった。LPは赤く表示され今にも死にそうだがそれさえ視界に入らないほど呆気に取られてしまったのだ
「ちょい待って! ポーション飲んで! 本当に悪かった! 私に強くして欲しいだよね? 喜んで強くして上げるよ」
「ほ、ほんとに?」
「あぁ! 任せなって。と、言ってやりたいんだけど私には七人の忠臣がいてね? こいつらが五月蝿いんだ。この七人のうち、四人に認められたら許可を出すことにしよう。やれそう?」
「うん!」
「そか。頑張れ」
これが本当の戦いの始まりだったことにミロは知らなかった。七人のうちの四人に認められることがどれだけ難しいかを
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