魔王の試練

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魔王の試練

「認めない! 俺はあいつを認めんぞ!」 「黙れサタン。お前が簡単な試練を与えるからだ」 「マモン! 貴様とて同じだろう! 私欲を混合させおって!」 「それの何が悪い? 普通ならば倒せる魔物ではない。だが、あいつの中に俺はアンノーン様と同じ狂気を見た。だからこそ認めたのだ」 「あなたたちは甘いのよ! もっと試練を難しくしてよね!」 「貴様がまともな試練を与えておればこんなことになっておらんわ!」 この部屋には七人の男女がいて其々が言い争っていた。無関心なのは暴食、嫉妬、怠惰の三人。彼ら三人はどうでもいいようで欠伸をしたり髪を弄ったり眠っていたりと様々だ 「ルシファー! 何故にお前が許したのだ!」 「黙れ。俺はあの方の御心に従うのみ。貴様らの都合など知るか」 「アハハハハ! マジそれだよね!」 「どうでもいいから早く終わって欲しいの。私はアンノーン様にクッキーを焼くので忙しいの」 「レヴィのクッキー? 僕も食べたい! 作ってよ」 「い、嫌なの。ベル全部食べちゃうの」 「おいらも食べたいけど………ダルい。食べさせて。口に運んで。噛ませて。飲み込ませて」 「き、貴様らも同罪なのだぞ!!!! あの方の寵愛を受けるのは我々だけだと決めたのではないのか!!」 机を叩き破壊して城が大きく揺れる。それほどまでに激昂してるが誰一人反応はしない。むしろ、これが日常だと言わんばかりに全員が無視していた 「我らが勝手に決めただけ。あの方が誰を愛するか、それはあの方の自由。あの方を縛り付ける気ならば貴様とて容赦せんぞ?」 「我に喧嘩を売るか? 七つの大罪のリーダー、ルシファーとて遠慮はせんぞ!!」 ルシファーとサタンの喧嘩は城を大きく破壊しどんどん原型を失くしていく。そんな二人を無視してレヴィと呼ばれた女性はキッチンへと向かっていく。その後ろをベルゼブブが怠惰を連れて歩いていっていた 「ダルい。寝てていい?」 「いいよ! 出来たら起こして上げる。食べるんでしょ?」 「………食べたい」 「うんうん! 一緒に食べようね」 「お待ちなさい! わ、わたくしもクッキーを作りますわ!」 アスモもまた三人を追いかけるようにキッチンへと向かい残されたのはマモンと呼ばれた男だけ 二人の戦いの行く末を見てるのか愉しそうに嗤いながら様子を見ていた 「どっちか死んだら素材にしてやる。さぞかし最高の素材が取れるだろう。殺せ。殺しあって最高の素材となってくれ。ククククク」 そんな歪な関係の七人は今日も平和に一日を過ごそうとしていた。そんな破壊されていく城を散歩しているのはアンノーン。城の倉庫を目指していた 「確かあそこにあったのよね」 そこは宝物庫で様々なものが置かれていた。金銀の財宝は勿論、貴重なアイテムや強力な武器などもある。だが、そのほとんどに目をくれずアンノーンは一つのネックレスを手にして喜んでいた 「あった! これで修行が出来るわ」 赤色の宝石が怪しく光るネックレスは何処か禍々しく不気味なオーラを出していた。それを手にしてアンノーンは手に持つと持っていたネックレスから次々と黒い触手が現れアンノーンを飲み込もうとしたのだが 「殺すぞ?」 「!!」 その言葉一つで触手の動きは止まりゆっくりと消えていった。アンノーンは気にすることなく破壊されていく城の中を歩いていく。瓦礫が飛んできても全く気にせず片手間で破壊していく。自分に危害を加えられても気にしない。そもそも危害を加えられてるとも思っていない。いや、自分に危害を加えられる存在がこの世にいるとは思ってないのだ それは圧倒的な自信。最強と言う称号を手にした自負。最強とは誰にも負けないからこそ最強なのだと思ってるのだから 「うん? あれ? クララじゃん!!」 「お久し振りです。少しだけお話よろしいでしょうか?」 「どした? ヴェスタリアのこと放置していいの? 泣くよ?」 「連れてきてるので問題ありません。お嬢様がお待ちしてますのでこちらへどうぞ」 「クララの淹れる紅茶を飲めるなんてラッキーだね♪」 実はスコタディたちはもう一つの限定クエストを引き起こそうとしてることに気付いていなかった 何度でも言おう。DMSの怖いところは本人たちも知らないところで限定クエストの条件を満たしてしまうこと。三人目の魔王と引き合うのはもう少し後の事だった
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