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魔王の試練 ②
「さぁこれを付けて」
「了!」
アンノーンに渡されたネックレスを素直に装備するミロ。それは呪われた装備で何も疑うことなく身に付けた。その瞬間、ネックレスから黒い触手が現れ全身を蝕んでいく。ミロの肌に黒い触手の跡が現れてしまい、まるで縛り付けるような痕跡が残ってしまった
「お、重い」
「それは呪いのネックレスで効果は愚鈍。AGIがゼロになる。LPも残り1だから直ぐに死ぬから気を付けてね?」
「マ、マジ丸?」
「マジ丸? う、うん、マジ丸。さて、私が与える試練は簡単。一角兎を10匹放つから全部捕まえてそこのゲージに入れる。簡単でしょ?」
「ちょ、ちょっと待って? 攻撃されたら死ぬよね?」
「うん」
「AGIゼロなんだよね?」
「うん」
「………ハハッ」
乾いた笑いしか出ない。攻撃されれば即死。避けることは出来ない。つまり、攻撃される前に捕まえゲージに入れるしかなかった。それは簡単なことではないのだから
「それじゃぁ………頑張れ!」
「………お、怒ってない?」
地面のあちこちに魔方陣が現れ一角兎が出現していく。問題なのは全てが殺気だっていてミロを殺す気満々なことだ。ミロは一旦、逃げようと思って後退りしようとするのだが体が重く想像以上に鈍かった。そして、後ろから串刺しにされて死んでしまったのだ
「………で、リボーンポイントはここなんだ」
「何度でもやり直せるから気長に頑張れ」
親指を突き立てて壁にもたれ掛かってこっちの様子を見るアンノーン。ミロは今度は周囲を警戒し攻撃に気を付けようとするのだが
「う、動けない」
逃げようにも歩行困難者のような動きしか出来ない。避けることは明らかに不可能。だが、受け止めるのも不可能。つまり、完全に詰んでいてどうしようと出来ないことを意味してるのだ
「あっ!」
ほんの少しの油断でカスッしまいまたリボーンしてしまう。そして、また最初からのスタートとなってしまった
「………ルシファーが見に来るなんて珍しいね」
「俺はアンノーン様の側に常に控えているだけです」
「いつもありがとね。あの子にアドバイスでもして上げてよ」
「必要ないかと」
「えらい買ったもんだ。どした? 柄じゃないじゃん」
「あの娘だけです。俺の傲慢のスキルに抵抗したのは」
「?!」
アンノーンは目を見開いて驚いてしまった。ルシファーの傲慢をレジストするにはかなりの精神力が必要になる。それは並大抵な強さでは抵抗出来るものではないのはないことをアンノーン自身が知ってるからだ。アンノーンでさえ傲慢のスキルの前には抵抗するのが難しいのだから
「ルシファーが見に来るわけだ」
今、アンノーンはミロの評価を改めていた。元々評価は高かったのだが想定以上に高くしたのだ。これならばと考えて口許に小さな笑みを浮かべた。そんなアンノーンを見てルシファーが今度は驚いた。アンノーンの思惑に気付いてしまったからだ
「ルシファー。あのさ………」
「言わないでください。俺は何時いかなる時もアンノーン様の御心のままに。俺の傲慢のスキル、あの娘に教えることを誓いましょう」
「それじゃ駄目なのはわかってるよね?」
「御意に。傲慢の試練を与えましょうぞ」
そんな会話が繰り広げられているとは知らずミロは既に10回以上はリボーンしていた
だが、目が全く死なない。むしろ楽しくなってきたのか燃えてきていてコツを掴んだかのように攻撃を避け始めたのだ
「………傲慢をレジストする訳だ」
「あの娘は傲慢の才覚があります。それはこの俺が保証しましょう」
「傲慢を認められるなんてなかなかの才覚だね」
「俺の勝手な考えですが戦いとは傲慢なものです。如何に自分の戦いを押し付けるかが全てかと」
「それには同意する」
「しゃぁぁ!!」
そんな中、ミロは遂に一匹目を捕まえることに成功した。だが、喜んだのも束の間、直ぐに絶望へと叩き落とされてしまった
「げ、ゲージが遠くなった」
「言うの忘れたけど一匹入れたら新しいゲージに入れないと駄目だからね」
「最初に教えてよぉ!!」
完全に気を抜いてしまって一角兎にまたしも角に貫かれて死んでしまいリボーンしてきまうミロ
そして、気合いを入れ直そうと目の前を見るとある異変に気が付いた
「あ、あれ?」
「死んだら1からだからね」
「それも早く言ってよぉぉぉ!!」
だが、避けるのはどうやらコツを掴んだようでフェイントを混ぜながら確実に避けていく
まるで未来を見通すかのようにゆっくりながら避けていった。ここまで到達するのに早くも数時間もかかっていてミロは大量の汗を流している。それでもギブアップと言わず愉しそうに笑みを溢しながら確実に攻撃を躱していた
「はい。一匹♪次の場所は………?」
ミロは順調に一匹、二匹、三匹と捕まえていた。ミロは完全にコツを掴みもうすぐ終わらせれる。そう僅かに気を抜いた時、明らかに一角兎の動きが変わった。単独で動いていたのが連携を取るようになってきたのだ
「ちょちょちょちょちょ!!」
「言うの忘れ………」「連携取るのね? OKOK! もうわかった! これ以上言い忘れはないよね?!」
「ある! 残り三匹になると一気に強くなる」
「OK!」
ミロは必死に躱しながらアンノーンの言葉を遮り急いで確認する。これ以上言い忘れがあっても困る。これ以上ないことを確認してミロはギアをもう一段階上げるのだった
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