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ヴェスタリアとの邂逅
ギルドホームのリビングにはメンバー全員が集まっていた。対戦を申請し対戦が始まるのを今か今かと待ちわびてるのだが始まる様子はない。向こうから申請が拒否されて気が付いたら申請し直さないとならないのを何回も繰り返していた
「何時始まるの?」
「対戦が出来なかった場合はランダムマッチのはずなんですが………不具合かもしれませんね」
「ってか、俺たち全員が拒否されてるっておかしいだろ?! このままじゃギルドメンバー同士で潰しあうぞ?」
「………私は参加してませんから関係ありませんわ」
「フィ、フィリアさん! 気にする必要ないですよ! さ、参加は個人の自由なんですから」
「俺たちの実力を恐れてるのだな」
「弱い奴に当たりますように。神様仏様! お願いします! 五百円投げ銭したんですから頼みます!」
「ギヒィ」
メンバー全員が暇そうに項垂れている。スコタディだけは紅茶を楽しみ暇な時間も楽しんでるのだが
そんな時、ふと思い出したかのようにスコタディは口を開いた
「そう言えばヴェスタリアの情報を聞きました?」
「あぁ。聞いたよ! 幸福のヴェスタリア。別名、不合理のヴェスタリアだってさ。全ての攻撃が必中の必殺。アンノーンはあれほど戦うのが面白い奴はいないって笑ってた。アンノーンはベルマークとは戦いたくないけど戦わずに済むならヴェスタリアとも戦いたくないんだって。死にたくはないからって笑ってたよ」
「それ以外で何か言ってましたか?」
「後は会って確認してみろって。いい子だから直ぐに仲良くなれるとも言ってたかな? 我が儘で天然でポンコツでアホだから」
「わ、悪口しかないんですか?」
「そんなスコタディにいい情報。多分だけど………私出会ったよ?」
スコタディは面白そうだとその話に食い付いた。話を聞くと出会いは本当に唐突で予期せぬ出会いだったのだとか
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「ちゅかれた」
ミロは疲れると幼児化する。それは何時ものことで知ってる人は知ってる事実だ、ミロはどうも疲れると誰かに甘えたくなる。甘いものを食べたいとかはなく誰かに甘えて甘やかされたくなるのだ。その相手がいつもはスコタディなのだが今回はいない。なので我慢して耐えていた
そんなミロは半壊した城の中をログアウトするために用意された自室に戻ろうとしていた。ここ数日、激しい戦闘を繰り返し死んだ回数は数百回を超えただろう。それでも諦めずに立ち向かうのは純粋にスコタディに勝ちたいから。負けるのはプライドが許さないのだ
「イテッ」
そんな時、目の前にゴスロリ服を着た少女が転がっている石………いや、岩を足に引っ掻けてこけた。ミロは助けようと思ったが少女は直ぐに立ち上がりミロを睨んできた
「貴女ね? 私をこかすなんて上等じゃない!」
「えっ? 違うけど?」
「そうなの? なら、いいわ。なんであいつの城は何時も壊れてるのよ! 奪ったなら大事にしなさいよね!」
「………真っ当な人がいた」
戦闘になるのか? 一瞬そう思ったがそんなこともなく素直に信じてくれる。そんな少女は服の埃を払ってミロに近付いてきた
「凄く疲れてるわね? 何かしてたの?」
「ちょっと訓練? を」
「ふぅん。程々にしときなさいよ? 限界までやって身に付くものなんてないわ。体が壊れたら意味がないもの」
「うん。ありがと」
「べ、別にお礼を言われるようなことは言ってないわ!」
ツンデレだぁ。と思っても口に出さないミロ。見た目も幼く背も小さいので保護欲にかられる。そんな合法ロリのような女の子が急に両手を伸ばしてきたのだ。ミロは何をしてるのだろうと思うと可愛いことを言ってきたのだ
「クララは私を抱き締めると癒されるし疲れが吹き飛ぶって何時も言うのよ。だから特別に抱き締めることを許可するわ」
「クゥ~」
何だ? この可愛い生物は。ミロはあまりの可愛さに頬が緩みにやけてしまう。そして、素直にバグすると赤ちゃんのような香りと心地いい体温が伝わってくる。確かにこれは癒される。幸せを満喫していると少女の後方から鋭い嫉妬と殺気を込めた視線を送っているメイドがいたのだ
「お嬢様? そちらの方は?」
怒り、嫉妬、殺意。様々な感情が入り乱れた声でそれこそ優しく問いかけたメイド。そんなメイドの気持ちを知ってか知らずかお嬢様と呼ばれた少女は普通に返答した
「疲れてると言うから特別にバグさせたの。クララの豊満な胸も気持ちいいけどこの子も安心感があって落ち着くわ」
そう言ってギューっと抱き締めてくるお嬢様と呼ばれた少女。その瞬間、メイドは隠し持っていたナイフを握り潰して破壊した音が木霊した。目から血が出そうな勢いでこっちを睨んでる。ミロだって好きでこんなことをしてるわけではない。嫉妬されても困るので解決策を思い付いた
「やっぱりメイドさんにバグされる方がいいんじゃない? 一番はやっぱりメイドさんでしょ?」
気付け? そこで一番と言ってくれ。そうじゃないとミロの命が断たれる。そう考えて訴えた気持ちは見事に的中した
「当然よ! クララが一番に決まってるわ」
「お、お嬢様!!」
「ちょっと人前で抱き付かないでよ」
ミロごと抱き締められて背中に爪を立てられてジリジリとLPが減っていくミロ。女の嫉妬は怖いと言うが改めて実感した瞬間だ
「今回だけは見逃します。今回だけは」
「ハハッ。ありがと。それに充分癒して貰ったからもういいかな?」
「そう? なら、また何処かで会いましょう。貴女とはまた再開する気がするわ」
「うん。またね」
そう言って別れたミロは少しだけ恐怖を感じていて必死に隠していた。アンノーンと同じ気配を感じたからだ。圧倒的な存在感、圧倒的な強者のオーラを
それがミロとヴェスタリアの邂逅だったのだ
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「そんなことがあったのですね」
「うん。多分だけどね? あれがヴェスタリアだと思うよ。めちゃくちゃ可愛かった!!」
「ミロがそこまで言うなら相当可愛いのですね。少し嫉妬します」
「スコタディの方が可愛いよ」
「当然です! これでも街を歩けばナンパされない日なんてないんですから!」
私もなんだけどな。という言葉を飲み込むミロはニコニコだけしとく。拗ねると面倒臭いのは誰よりも知ってるのだから
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