9人が本棚に入れています
本棚に追加
スコタディVSトレイン ①
「バイバイ」
「う、うわぁぁぁぁ!!」
開始数秒で光の欠片となって消えたのはミロの対戦相手。彼もまた中級では有名なプレイヤーだったと言うのにミロに言葉通り手も足も出ずに負けてしまったのだ
「あんなのどうやって勝てって言うんだ?」
ギルドホームへと戻った男が口にした言葉はそれだけだった
何をされたかわからない。急に動けなくなり短剣を心臓に突き刺されて終わった。対策をしようにも何をされたかわからない限り動きようがないのだ
「に、二度とあいつとは戦いたくねぇ」
ギルドメンバーはこの男がそこまで言う相手を誰かと訪ね素直にミロと言う名を出した
それは寿限無を打ち倒した有名人で誰しもが知ってる人物でもあった
どうやって負けたのかと言うとわからないの一点張りで何が起きたのかさえ理解が出来ていなかった
ここで悔しいのがアーカイブを見れないと言うことだ。ここで彼らがアーカイブを見れればまだ光明があったかもしれない。だが、解決の糸口である人物が混乱し絶望のど真ん中にいるのだ。彼らは手を差し伸べて助けようにも引く手がないのだからどうしようも出来なかった
「な、何があったと言うんだよ」
それはSNSを駆け巡り一躍の有名人となってしまった。ミロの一日目の対戦相手は五人。その五人が全員、絶望し心をへし折られていたのだから
「………」
当然、スコタディはそれをチェックし知っていて何が起きたか状況を推測していた。当の本人はドラドラとじゃれあい遊んでいる。自分が話題に上がってるなど知ってか知らずか興味がないと言わんばかりに何も語らないのだから。それはわかるでしょ? 察してよ。そう問いかけてるかのように
「一日目の敗退者がかなり出てますね。中級プレイヤーの三割が敗退したと出てます」
「へぇ。スコタディの言う通りじゃん。どうでもよくない?」
「えぇ。十日間の期間を待たずして終わる。それが私の予想です。順調と言えますね」
スコタディは全員に自分の予測を話した。全てのプレイヤーは初日でかなりの数が敗北する。全員が必死になり学習することもなく落ちるのではないかと予測したのだ。それが見事に的中し試合は二日目、三日目と経過していった。そして、三日目の時点で七割のプレイヤーが観戦エリアへと招待されてしまったのだ
「私の予想通りになりました。ここからが正念場です。気合いを入れましょう」
ギルドJKは全員………フィリアは出場してないので一人を除く全員が残っていた
これもスコタディの予想通りで順調だと言える。だからこそここからが正念場だと言ってるのだ
これまで個人差はあるもののそれなりの対戦を重ねてきている。日にちが経過するごとに対戦回数は増え申請が通ることもあった。逆にギルドJKに挑戦状を叩き付けるように申請してくる人物もいた程だ。それは少しでも情報を抜き出してギルドメンバーに残そうとしたのか、ただ単に興味本位なのか、自分に自信があったのか、それは定かではないが何かしらの思惑があったのは間違いない。ギルドJKのメンバーは最強の頂へと挑戦すると啖呵を切っている。故に挑戦を断ることが出来ないのだ
既にトレインだけは一回敗北していて気合いを入れ直している。トレインも臆病ながらも負けず嫌いで意外に奮闘している。やるからには勝つ精神で今まで戦ってきたのだ
「あっ! 対戦相手が決まっ………」
そう言い残してトレインが突然消えた。全員が見送るなか消えている人物がもう一人、全員がないかもしれないがタイミング的に充分あり得るだけにトレインに御愁傷様と祈りを送ったのだった
「………ひ、ひぃ」
「………そうですか。私も飛ばされたかと思ったらトレインさんですか」
トレインは心の底から運命の女神を呪った。人生でこれまでにないぐらい呪いの言葉を投げ掛けた。何故、最も戦いたくない相手を自分の対戦相手に選んだのか。そう思うだけで殺意さえ芽生えてくるのだ。可愛ければ撫で撫でで許すと思ったりもしたのだが
「トレインさんが相手ですか。困りましたね。貴方とだけは戦いたくありませんでしたが本気でやらせて貰います!」
「!!」
圧倒的な威圧感。だが、トレインはスコタディの言葉に感激を受けてしまった
自分とは戦いたくない=自分を認めてくれる=頼りになる男!
脳内は勝手に自己都合による好都合な解析を行い自分にとっていいように捉えてしまったのだ
当然ながらスコタディはそんな意味で言ったのではない。この変態が何をしてくるか予測が付かない。もしかしたら下着を奪取するために全力を注いでくるかもしれない。だからこそ戦いたくないと言ったのだから
『ロックアーム』
スコタディは秒で終わらせようと一気に接近してトレインを仕留めにかかる。だが、勘違いさせてしまった罪は重い。増長した勘違いな好意はトレインの本来持っている実力を引き出すのに成功してしまったのだ
『ステルス』『サイレンサー装着』
スコタディの目の前から姿を消すトレイン。スコタディはトレインのスキルだけが仲間のうちで知らない。本人もたいしたことがないと教えてくれない上にニコも知らないと来た
だからこそ、スコタディはトレインと言う男を分析しどんな人物かを考えたことがある
シスコン、臆病、逃げ腰、弱気、変態
知ってる情報はこれが全てだ。だが、忘れてはならない。ニコはこれでも初心者エリアだが覇者を取るほどの実力者。だが、その功績は本人曰く兄によるものだと何度も言う。兄のサポートがなければ勝てなかったと
つまり、妹のニコも凄まじい実力者で影に薄れてしまっているが兄のトレインもまた覇者を取れるほどの実力者なのだ
「ッ?!」
何の気配もなければ銃声も聞こえなかった。なのに左腕を撃たれダメージエフェクトが飛び交ってしまう
しかも、麻痺を付与したようで左腕が思うように動かない。一撃で仕留めに来なかったのはスコタディが心臓と頭を狙撃することを警戒してるからだ
だからこそ、動けないようにゆっくりと時間をかけて倒すつもりなのだ
「………やはりギルド創設時の最初に言った通りでした。倒すならやはりトレインさんですね」
それはギルドメンバーで冗談を言っていた時だ。誰がPVPの覇者を取るかの話をした時、全員が自分が取ると言っていた。そんな時にメンバー全員がトレインを倒すと宣言したことがあった。だが、スコタディはその時からトレインを警戒していたのは本当だった。トレインこそがギルドメンバーのなかで最大の敵だと認識してたのだから
最初のコメントを投稿しよう!