9人が本棚に入れています
本棚に追加
スコタディVSトレイン ③
負けたくない
それは両者が思ってることだが特にトレインにはその思いが強かった
トレインは世間で言うシスコンだ。確かに変態だが妹愛は誰よりも強い自信がある
小さい頃から周囲に馴染めなかったトレインは妹のニコだけが自分を見てくれて平等に接してくれるのが嬉しかった
だからこそ妹のニコにはカッコいいと思われたい。凄いと強いんだと思われたい。世界で最高の兄でいたいのだ
「い、今から俺の最高の攻撃を繰り広げる! これがスコタディちゃんに当たれば俺の勝ち! 避けられたら俺の負け! しょ、勝負ばっ!!」
肝心なところで噛んでしまったが気付かれてないことを祈る。いや、スコタディは気付いているがいちいち突っ込んだりはしないしからかったりもしない。トレインがどれだけの思いで自分に勝負だと言おうとしてるのか。それを考えるとおちょくることなど出来はしなかった
「なら、私も全力で対応しましょう。ちょっとやそっとの防御では無駄と言うことで宜しいですか?」
「だ、大砲撃を連続で放つ! 撃てる限界まで撃つからね!」
「そうですか。それを言わなければ勝率は上がったと思うのですが………」
「うっ! ひ、卑怯なのはい、嫌ひゃかりゃぁ」
思わず困った笑顔を浮かべるスコタディ。そんなスコタディに言われて気付いたトレインは思わず赤面しやってしまったことに気が付いた。だが、そんなトレインだからこそ愛しく思えるし受け止めたいと思うのだから
「どうぞ。私は逃げも隠れもしません。トレインさんの全てを受け止めて勝利をもぎ取りますから」
「………ありがとう。やっぱりスコタディちゃんについていって正解だった!!」
『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』『武装変換。擲弾銃』………
「………はっ?」
あり得ない
その言葉しか出てこなかった。目の前には大量の重火器の山。それが空中に浮かび銃口は全てスコタディへと向けられている。これだけ連続でスキルを使えるなどDMSのなかでは考えられないがこれがトレインが手にした力だと言うことの証明なのだろう。それかバグかもしれないがこんなものをいつまでも放置するわけもない。つまり、公式がきちんと認めている使用だということなのだ
「今から撃つ!!」
「ハハッ。本当にトレインさんは最高です! こんなのどんなプレイヤーにでも勝てるじゃないですか! これに勝ったら………最高の栄誉を貰うのと同じです!!!!」
『大・砲・撃!!』
『シールド』『泥田坊』『アースウォォォォル!!』
スコタディが張った三枚の壁たち。シールドなど気休め程度にしかならず一瞬にしてガラスが割れる音を立てて消えてしまった。泥田坊の両腕にロックアームを装着させ防御姿勢で耐えさせたがこれも崩壊してしまう。その次に備えるはアースウォールの魔法で作った土の壁たち。これも数秒だけ耐えたが完全に崩壊してしまった
「俺の勝ちだ!!」
もうスコタディを護る壁はない。ロックアームの腕が二本だけ残されてはいるが無駄に終わるだろう
そう、普通ならばだ
「時間稼ぎでしたので問題ありません」
『新緑の壁』『魔神の手』『憑依』『咲き乱れる花園』『効果増幅』
「咲き誇りなさい!!!!」
木々が急激に成長しスコタディを完全に囲う壁となった。そんな壁を中心に花々が咲き乱れ美しい花畑となっていく。そんな新緑の壁に砲撃が当たる度に花畑に咲いた花たちは枯れていく。咲き乱れる花園の効果は対象の身代わり。ダメージも状態異常も全て変わりに引き受けると言うものだ
ミロが覚えた大地の息吹の上位交換と思われ勝ちだがあちらは障害物としても使用可能。こちらは込めた魔力の分だけ咲き踏まれるだけで破壊できてしまう脆い物だ
どちらも一長一短で使い勝手がいいことは変わらない。スコタディはこちらが気に入って使ったと言うだけだ
「そんなもの無駄だよ!!」
「えぇ。それだけの重火器の前にこれも所詮、無用の長物でしょう。ですから、もう一度言います。時間が欲しいのですよ」
『同化』
スコタディはロックアームを地面へと埋め込んでしまった。そして、トレインは先程のことを少しだけ思い出した。|魔神の手がロックアームに吸い込まれていったのを《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。そして、効果増幅と言っていたのを
「来なさい。我が化身」
『土人形』『アースクリエイト』『大自然』
泥田坊と土人形。土遁魔導師のおじいさんはきちんと使い分けていた。それは自立式か操作式の違いだ
泥田坊は自立しAIによって行動し動いてくる。その巨体と延びる腕、物理攻撃に対する圧倒的な強さにより倒すのを困難とさせていた
一方、土人形は術者が操作しないとならない。産み出す数にもよるが多くの数を召喚するとそれだけ操作が難しくなり無駄なスキルになりやすい。コスト面で言うならば断然、土人形なのだが面倒が多いのも土人形だ
だが、土人形にはもう一つのメリットがある。それは大きさを自由に選べると言うもの。巨大ロボにするのも可能だと言うことだ
だが、同時にデメリットでもある。大きくなればその分、コストもでかく強くなりにくい。泥田坊のように防御面に優れてる訳でもない。攻撃力は上がっても防御力や素早さが上昇するわけでもない。これらは全てプレイヤーが強くなれば同時に強くもなるが周囲も当然強くなっているのでたいしたことがないスキルと放置されるほどのスキルだった
「ま、マジ?」
土人形は新緑の壁で覆われているスコタディを飲み込み中心に添えてしまった。体から木々の蔦をはやし全身に纏わりついていく。それらが筋肉のように伸縮し土人形ではなく植物のゴーレムとして立ち上がったのだ
「か、カッコいいけど………い、一緒だぁ!!」
「いいえ。違いますよ? この形態の凄さは攻撃力以上に防御力とタフネスにありますから」
大砲撃をどれだけ受けても傷一つ負わないゴーレム。どれだけ硬いと言っても限界があるはずだ。なのに、全くびくともしないのだからあり得ないことだった
「さて。攻撃は終わりました。私の勝ちです」
「………う、嘘ぉ?」
スコタディがトレインに向けて拳を放つ。それは何処までも延びていきトレインに命中し壁へと打ち付け連続で叩きつけた。そして、トレインはそのまま光の欠片となって消えたのだった
最初のコメントを投稿しよう!