カンゴク洞

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 「スコット、掴まれっ!」ハーメルが上から手を差し伸べてスコットの手を握り力一杯に引っ張る。 水位が崖のすれすれの所まで上昇してきたが、ジュールたちは崖の天辺まで登頂した。島の面積は漂流した時と比べて随分縮んで来ているようだ。先程まで陸地だったところが既に海底と化している。  「気候の変動が急すぎるけど、こんな海流はパパでも見たことは無いだろうな」  激しい流れにより、パールプリンス号の残骸や自分たちが密航していた船の残骸が猛スピードで右方向から東方向へ流されていく。急な気候変動とはいえその前兆は現れる筈だが、それが全く起こらないというのも不思議だった。  「満潮になるなら月が見える筈だけど、それが全く見えない。風の向きや強さも変わらなかったしどうしてそうなる。これまでの情報を纏めてみるか」  ジュールはこの島に来るまでの事を振り返ってみる。 「カンゴク洞の本当の姿は、海に棲む巨大な魚の胃袋の中だ」 「ちょっと待ってくれっ! ここがカンゴク洞そのもので、俺たちは巨大な魚に飲み込まれたって急すぎるがどういう事なんだ?」 「私にも何が何だか理解が追いつかないんだけど説明してよ!」 「一番聞きたくない結論だけど、僕たちはここで終わったという事?」 一同はパニックになりながらジュールに訊ねた。  「一度入ったら二度と出られないのは、ここが魚の胃袋だから出入り口がないんだ。魔物はスコットが持って来た航海日誌にヒントがあった。人魚の群れが突然逃げたと。それは僕たちやパールプリンスを飲み込んだ魔物が接近してきたからだと思う。ある時は南、ある時は北で発見されているのは、巨大な魚の魔物はマドロスの近海を移動しているから。コイツが海の中を移動すると大きな波が発生する。それがグリーンルーフって訳だろう」  「そこまではわかった、俺たち食べられたのに生きてるのが不思議だ」  「恐らく、魚の魔物は歯がないんだ。くじらみたいに丸呑みにして、腹の中に流しこんでいるけど、消化されず胃の中に残ってしまったものが島になったんだと思う」
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