カンゴク洞

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 「大人たちが見つからないのも、航海日誌で探索しに行った人たちが消えたのも、魔物に消化されたから痕跡も残らずいなくなったって事?」  スコットはごくりと息を飲む。  「恐らくは、この霧は胃の中でたまっていたガスだろうね。だからピストルから飛び散った火花で火が点いたんだ。胃ぶくろがびっくりして急激に動いたんだと思う」  「たぶんジュールの言っている事は正しいと思う。噂だと『魔物がいる』ってあるけど、これはどんな姿の魔物か、までははっきりしていないんだ。目で捉えきる事が出来なかったんだ」  「どうして断言出来る?」ハーメルが訊ねる。  「航海日誌ではパールプリンスのクルーたちが人魚を実際に見た時の事を、とても具体的に書いているんだ。何を食べて、どういう声で、どういう行動をしたとか。ひとが実際に見たものについてははっきりと書ける。だけど、そうでないものはざっくりとした文章になる」  「魚の魔物はパールプリンスの真下から丸呑みにしたんだろう、僕たちも同じように飲み込まれてここに来た」  「そこまではいいだろう。でも財宝があるっていうのはやっぱりデマだったのか?」  仮に海賊をおびき寄せる為だけのトラップだとすると、そうでない者まで巻き込んでしまっているのは腑に落ちないとハーメルは口を尖らせる。  「それは訂正しなくちゃいけないな。財宝はきっとこの胃袋の中にある」  「あるってどうしてわかるの?」アリサは首を傾げた。  「僕たちのいる足場はどこかの島の土だろう。胃の中の液体に浸かっているのに溶けていない。つまり鉱物や金属は消化出来ないって訳だ。お宝があるとすれば貴重な金属とか宝石かな。ここまで纏めると噂は全て真実だったといえる」  「そいつを探して売れば俺たち大金持ちになれるのか?」  「かも知れない。しかし、胃の液体が僕たちの足元まで来てしまったらおしまいだ。まずはここから脱出する方法を探そう!」
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