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二
「ここは、どこだ?」
ジュールは見知らぬ島の浜辺で意識を取り戻した。島の周囲には深い霧が立ち込めているが、ぼんやりと船尾楼や大きな船の残骸が浮かんでいるのが見える。折れているが帆柱が三本、ボロボロになった帆が七枚、二列の砲台が見える。
「このサイズはガレオン船、しかも戦列艦だ。貿易商が乗っていたんだろうけどガレオンはバランスを取りにくい欠点がある。でも戦列艦なら海賊程度の海難でここまでボロボロにはならないだろうに、何故なんだ?」
問うてみたが誰もいない。この島に漂流した時にはぐれてしまったようだ。探そうにもこの霧である。歩いて探せば霧に乗じて猛獣などが襲って来る可能性がある。
「みんなっ! 無事か?」声をかけてみるとよく響く。
「ジュール? 生きてる」メルヴィルの返事がする。
「二人とも無事か、良かった」スコットの安堵の声。
「みんなどの辺にいるのっ?」アリサは散らばった友人を探している。
「全員無事みたいだけど、闇雲に動くのは危険だ。コインを紐で括りつけて僕の声のする方向に投げながら集まってくれ」
投げたコインを辿っていけばジュールのいる位置まで集合出来るが、もし猛獣に当たれば引っ張り返すので、そこを避けて移動すれば襲われる心配も減るとジュールは踏んだ。
「でもコインと言われても」
「船にいる時、みんなに渡したろう。海賊の給料がどうって説明した時に」
「そういえば受け取った」ハーメルはポケットからコインを取り出して、紐の変わりに千切った服の袖を縛り付け、ジュールの声のする方向に投げた。
「猛獣に当たりませんように」アリサは恐る恐るコインを投げながら砂浜を歩き始める。すると何かがぐいとコインを引っ張り返して来た「も、猛獣?」
「僕だよ。良かった、無事に集合出来たね!」
ジュールたちは改めてお互いの生存を確認したが、船に乗っていた大人たちの姿も、船の残骸も見当たらない。どうやら無事なのは自分たちだけのようだ。
「とはいえ、カンゴク洞を見つける前に遭難したんじゃ元も子もない。俺たちで島を脱出する方法を見つけるしかないな」ハーメルは霧の中に目を凝らした。
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