カンゴク洞

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 「あそこのガレオン船はかなりデカい、ビスケットや干し肉が残っているかも知れないし、それに貿易中の品物の中に食べられる物が残っていたらラッキーだ」  ジュールは残骸となったガレオン船から荷物の食糧を拝借する事を提案した。  「どうしてあのガレオン船の中に貿易中の品物がある事がわかるんだ? それから船内にいた時もすごく詳しかったな?」  船乗りは酒飲みである事や、ビスケットが非常食で食べかたにコツがある事、それから海賊の給料に島流しの刑がある事に加えて、グリーンルーフの存在、ガレオン船に貿易中の品物があるのがどうしてわかったのかハーメルは疑問に思っていた。  「父親は貿易商やっていて、これに近いデザインの船に乗っていく。僕たちの住むマドロスは港街だ、色んな話を持って帰って来るんだよ。品物を見ればこのガレオン船がいつ大破したのかもわかるかも知れない」  マドロスの品物のみならば、貿易に向かう途中だったと思えるが、よその品物のみならば貿易から帰国する途中に海難したと推察出来る。つまりこの霧に包まれた奇妙な島はマドロスと貿易先の国の間に位置している可能性が高くなる。  「しかし、どうやったらこんな立派な船がボコボコにされるんだ」改めて見るガレオン船の残骸は、出来事の酷さを物語っている「サメじゃあなさそうだし、こんな事が出来るのは『エクスカリブ』か『グングニス』くらいだ」  エクスカリブは刀剣のような突起をしたノコギリザメの別名で、餌を突起で切り刻んで食べる。グングニスは槍のような突起を持つカジキの別名で船体に突進して穴を開けるが、どちらも沿岸部にはいない魚である。  「それじゃない、もっとデカい生き物かも知れない」  「ひょっとして太い八本脚を持った海の悪魔の事じゃないかな。東洋の人はそいつを退治してセウ油という物に漬けて食べるって、聞いた事がある」  スコットは漁師から聞いた話を思い出した。  「悪魔を食べるの?」  「海賊が人魚食べるくらいだからね」  「海賊って大酒飲みで丘に上がればギャンブルと女の子のお尻触る連中だと思ってだけど、そんな事までやってるの? やな奴!」  「誰が船内に行って荷物をとって来るか決めよう!」
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