カンゴク洞

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四 『グリーンルーフに襲われた我々は、ある島へ流れ着いた。深い霧に包まれており、島に何があるのかわからない。クルーたちが霧の中調査に向かった。しかし調査に向かったクルーが船に帰って来ることはなかった。霧の中で何かに襲われたのか心配なので偵察に数名向かわせる』  「マドロス発スペイル着のガレオン船はパールプリンス号って名前だったのか、グリーンルーフに襲われている。その前に人魚を目撃している」  スコットが持ち帰った航海日誌を読んだジュールは頷いた。  「人魚って本当にいるの?」アリサは驚いたように声をあげる。歌声で船を沈めるだとか、人魚の肉は不老長寿の効果があるという話を聞いた事はあったが、目撃したという話は珍しい。  「うん、人懐っこくて、草食で、綺麗な歌声だと書いてあった。女の子が多いみたいだ」  スコットは前のページの記述を思い出してこくりと促した。  「ベジタリアンな女の子かあ! 海賊がそんな人魚を食べてるなんて許せない!」  「人魚は歌声で船を沈めてしまうという説からすると、きっと順序は逆なのかもしれない。人魚たちは危険を感知して歌声で逃げろの合図を出した。それは恐らくグリーンルーフだろうけど高い波ってだけで泳げる人魚が危険を感知するだろうか、彼女たちにとって天敵が現れたのかも知れない。捕食者だ」  「ザトウクジラとかマッコウクジラみたいな大きな鯨?」  「それより大きいかもね。パールプリンス号のクルーも、僕たちと同じ海難事故に遭っているが、この島を調査したようだ」 『調査後にパールプリンスに帰って来れるようにロープを渡してある。それを伝って移動すれば調査ポイントとパールプリンスを往復するのに迷う事はない筈だ。しかし何故か誰も帰って来ないまま幾分か時間が経過した。一人だけ船に帰って来たけれど彼の言葉に私は耳を疑った「遺体の一つもなく、痕跡が何一つ残されず、全員消えた」といったのだ』  「全員消えた!?」ジュールは声をあげた。
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