カンゴク洞

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 「誰か助けてくれ!」  スコットが後ろからロープを引っ張られ転倒し引き摺られてしまう。  「スコット、どうした! 魔物が来たのか?」ハーメルはスコットの手をとるが、魔物の襲来より事態は深刻だった。ロープの最後尾は水に浸かり重たくなっており、返す波で後ろに引っ張られていたのだ。  「水位が上昇している。さっき温度が上がって膨張したのか? それにしても早過ぎる! このままでは溺れてしまう、走って逃げろお!」  ジュールは叫ぶと、ロープから手を離し、全速力でまっすぐに走る。  「嘘でしょう! 勘弁してよ!」アリサも全力でジュールの後ろを走り始めた。  「どうなってるんだよこの島!」ハーメルはスコットの腕を引っ張りながら、駆け出した。  「置いてかないでくれよっ!」  じわじわと陸地を侵食してくる水に飲み込まれないように、ジュールたちは後ろを振り返らず走り続ける。しかし、乗り上げてくる速度は異常に早い。ピストルやビスケットの袋を持った状態ではすぐに追いつかれてしまう。  「足場が物凄いスピードでなくなっていく、逃げ切れそうにないよ!」  「溺れたくなかったら前だけ向いて走れっ!」  「どこまで走ればいいのっ!?」  霧の先に、ぼんやりと段差のある場所が見えて来る。あそこまで走り切れば、迫って来る水に溺れずに済むだろうと頷き、ジュールはそこを指差した。しかしジュールたちの身長では簡単に登り切れそうにない高さはあった。  「あそこをよじ登るの?キツイよ!」  「走った後に崖登りってどれだけ運動すればいいんだ!」  「それしか避難する方法がないんだ」  ジュールたちは段差の崖にしがみつき、上を目指し、窪みに指をひっかけ、脚を付けながらよじ登っていく。しかし彼らの握力と筋力では崖を登るのに時間がかかる。運動が苦手なスコットは、ずるりと脚を踏み外してしまう。  「誰か引っ張ってくれ!」
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