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副会長の座
「……はあ」
昨日は、いろいろあったな。
バレンタインデーの翌日、俺は授業を受けながら、校庭を眺めていた。校庭では、隣のクラスの体育の授業があっていて、聖が誰よりも早く100メートルを走り抜けている姿があった。
昨日あんなことがあった後とはいえ、すぐに気持ちが変わるかというと、そう簡単なことではなかった。
幾分冷めはしたし、今までのように綺麗な想いのままではないが、もやもやとした何とも言い難い想いとともに、好きだという気持ちが居座っている。
いい加減、前を向かないといけないのにな。
俺が再び溜息をついた、その時だった。
「全校生徒のみんな、授業中に悪いな。これから体育館に集まってくれ。俺からみんなに話がある」
そんな放送があり、クラスメイトがざわめく中、俺はわくわくした気持ちになってきて、思わず口元に笑みを浮かべる。
会長。
お礼を伝えなきゃいけないと思い、準備したものがあるが、休憩時間に星を見つけることができず、渡せずじまいだ。
集会の後にでも渡そう。
俺は机の横にかけていた紙袋を手に取り、流れに従ってクラスメイトと共に廊下に出て並ぶ。
「それ何?」
俺の後ろに並んだ仁科裕翔が、興味深そうに紙袋を見ながら訊いてくる。
「会長に」
それだけ言うと、裕翔は合点がいった顔をする。
「ああ。昨日の」
「もしかして、噂になってる?」
「まあ、あの会長のことだしな」
裕翔の台詞に、俺も星の外見を思い出し、すぐに納得がいった。
「カッコいいもんな」
思わず零した台詞に、自分の中で照れが生まれる。
何照れてるんだ、俺は。
一人で動揺を振り払おうと頭を振ると、裕翔はそれに気づかないまま、うんうんと頷いた。
「見た目だけじゃなく、存在自体がカリスマっていうか。とにかくカッコいいよな。嫉妬する気も起きねえ」
「そう。そうだよな。とにかくカッコいい」
大げさなほどに裕翔に同意しながら、自分の中に生じた気持ちを持て余していると、背後からぽん、と肩を叩かれた。
「誰がカッコいいだって?」
「え?それはかい……」
振り向きながら、会話に加わってきた誰かに言葉を返そうとしたのだが、その姿を見て思考が停止した。
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