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え?
俺が戸惑ううちに、星が言葉を続けた。
「一年B組の鳴海流夜。俺は彼を推薦する。文句はないな?」
俺を知る人は俺を振り返り、え?何であいつが?という目でじろじろ見てくる。
だが、一番驚いていたのは俺だった。
俺が、副会長??
今ひとつ何が起こっているのか分からないうちに、星は一瞬だけ俺に笑顔を向け、以上だ、という台詞を残して壇上から去った。
体育館からも立ち去ろうとする背中を見て、俺は慌てて追いかける。
「会長!」
呼び止めると、星は振り返り、俺の姿を認めて笑顔を浮かべる。相変わらず邪気のない、真っ白な笑顔だった。
「おう、流夜か。俺のことは星でいいぞ」
「星、会長。なんで俺を?」
「会長はいらんが、まあいい。ん〜?何で流夜を選んだかって?そらお前」
星は紙袋を持ち上げると、あっさり答えた。
「これが嬉しかったから」
「……はい?」
思ってもみなかった答えに、思わず素っ頓狂な声を上げる。
「だって俺、人に好かれることはあっても、いつも何やかんや近寄り難いとか言われて、チョコレートもらったことはないしな」
「え、いや、それとこれとは」
星の台詞は嬉しいことだが、今のは答えとは違う。たが、星にとってはそれが答えそのものだったようで。
「とにかく、これが嬉しかったから。それだけだ」
星は満面の笑顔で繰り返すと、リアクションに困っている俺を置いて歩いて行ってしまった。
「は?え?」
残された俺は、体育館から戻り始めた生徒の視線が突き刺さるのを感じながらも、しばらくそこから一歩も動けなかった。
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