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生徒会室に星と二人になると、なぜか物凄く緊張感が増し、裸足で逃げ出したい衝動に駆られた。星をちらりと見れば、あのギラギラとした目とぶつかり、さっと俯いて逃げた。
そんな俺の態度をどう思ったのか、星はやけにのんびりとした口調で思いも寄らないことを口にした。
「さて。俺たちは晩飯でも食べに行くか」
「へ?」
ぽかんと口を開けて星を見れば、にっと歯を見せて笑い、急かすように続けた。
「ほらほら、親御さんにご飯は食べてくるとか連絡しろ」
「え?でも会長、何でご飯?」
「何でって、そりゃ親睦会だ。原稿考えるよりもその方が大事だ」
「??」
疑問符を浮かべる俺の肩を抱き、星は陽気な足取りで学校から連れ出す。
「星会長、ち、かいです」
「ん〜?」
星は気づいていてわざとやっているのか分からないが、時折肩をぐっと抱き寄せると、俺の顔を覗き込んでくる。
星は遠くから見てもカッコいいが、近くで見ると破壊力が凄く、緊張し過ぎてパニックを起こしそうになる。俺はさぞおかしな顔をしていただろうに、星はまじまじと興味深そうに俺の顔を見ると、いい笑顔で爆弾を投下した。
「俺、おまえの顔好きだわ」
「!?か、会長、それはどういう……」
「なんつーか、いっつも他の人の前ではあんまり表情変わらないのに、俺の前ではいろんな顔に変化するからだな。何でだ?」
「な、んでって……」
俺も星会長の顔が好きだから。
ぱっと浮かんだ台詞は、星と同じだが、全く意味合いが違う。
綺麗とか、カッコいいとか、単に外見を賛辞するにしろ、そこには他の意味も込められていて。
他の意味?
俺は自分の中に生じた疑問の答えを探そうとしたが、ぱっと浮かんだのは聖の声だった。
ーーふはっ
ーー俺に?男の、お前がチョコ?お前って単純だな。
「あ……」
俺の目から、ぼろりと涙が溢れた。
好き、だった。単純かもしれないけど、俺は聖が好きだった。
なのに、俺はもう、ちょっと優しくされたくらいで気持ちが変わろうとしていて。星会長も俺がもし、好きだなんて言ったら、そこに本気の色を感じたら、拒絶するんじゃないか。
星の優しい笑顔が反転するのが、想像することさえ怖くて、俺はぼろぼろと続けて涙を零していた。
けれど、すっと伸びてきた指先が涙を掬い取ったかと思えば、次の瞬間、星が取った行動で俺の涙は一瞬引っ込んだ。
「かい、ちょう……」
星が俺の体を抱き締め、温かい手で優しく頭を撫でてきたから。
俺は思わず腕を回して抱き返そうとしたが、周りの視線が気になり、そっと押し返した。
「星会長、周りが見てるから」
「……ああ」
星は俺の体を離したが、視線だけは離さないと言わんばかりに俺を見ている。その視線はやけに熱が籠もっているような気がして、俺は錯覚だと知りながらもドキドキした。
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