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 表彰式をサボり一人残っていた美術室の扉を開けたのは彼女だった。 「何してるの新藤くん」と問い詰められて思わず「体調不良で休んでる」と答えてしまったのだ。 「ダメだよーサボりは」 「むしろ美術部としては僕だけ活動してたとも言えるぞ」 「にしては何も描いてなかったように見えたけど?」  目ざといな、と僕は苦笑する。  あの真っ白なキャンバスが見えていたんだろう。見られたいものではなかったが隠す間もなかった。 「サボりたかったわけじゃないんだけどな」  気付いたら言葉をこぼしてしまっていた。どうやら彼女はそれを聞き逃さなかったようだ。 「なんかあったの?」  古江の問いに僕は素直に答えられなかった。  無駄だと思ったのだ。答えたところで、きっと彼女にはわからないだろうから。 「わかるよ」  あまりのタイミングに心を読まれたかと思った。  僕が何も言えずにいると「なんとなくだけどね」と古江は付け足す。 「エスパーかよ」 「知ってるもん。あの感じ」  椅子を傾けながら古江は宙を見つめた。  そこに答えでも浮かんでいるかのように、彼女はそれを口にする。 「描けなくなっちゃったんでしょ、絵」  また何も言えなくなった僕に、彼女は苦笑混じりにもう一度「わかるよ」と繰り返した。
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