三、夜伽ってなんだろう。

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「どれから読もうかな、ううーん、ああーっ、こんなにあると迷っちゃうよー」  とりあえずすぐそばにある本を手に取って、試しにパラパラめくってみる。  だけど、そこに書いてあるのは、あたしの知らない文字ばかり。このお城の柱とか、いろんなところで見かける、画数の多い難しい字だ。  もしかして、あたしが読める本って、ここにはない……?  ふとよぎった考えに不安になるけど、いやいや、そんなことはないって首を横に振る。  こんなに広いんだから、きっとあたしにも読める本があるはず……!  そう自分に言い聞かせ、目を凝らして背表紙を確認しながら進んでいく。  すると、やがてあたしにも読める文字を見つけた。  ひらがなで書かれた背表紙の本を、一冊手に取って開いてみる。  ひらがなとカタカナの中に、さっきの難しい字も混じってる。だけど、ひらがなで読み方が書いてあるから助かった。 「これの読み方は……ふんふん、これは……うんうん、なるほど、へぇー、こんなふうに読むんだ」  周りをよく見てみると、その他にも読める本がたくさんあった。  この難しい字を覚えれば、もっと読書の幅が広がるかもしれない。  そう思ったあたしは、回廊のような書庫を移動し、次から次へと本を読み進めていった。  そして気づいた頃には、最初の本棚に戻ってきていた。どうやら書庫を一周してきたみたい。  今なら意味がわかるかもしれないと、難しい字ばかりの本に、再挑戦してみることにした。  そうして手にした本を、ゆっくりと読み進めていく。  内容からして、男女の恋物語みたいだ。  だけど、あたしが知ってる絵本のような話じゃない。  触れ合いなんかの描写も、事細かに書かれてあった。 「え、えぇー……そ、そんなことまで、は、はわわ、なんてこと……」  これ以上読んじゃダメな気がするのに、ついついページをめくってしまう。すると、いきなり大きな絵が出てきて、ひぇっと小さな悲鳴を上げた。  開いた両ページいっぱいに、男女が裸で抱き合う姿が描いてある。  そう認識した瞬間、勢いよく本を閉じた。  挿絵にしては大きすぎる、文字しか書いてないと思って、完全に油断していた。  恥ずかしくて、この先はとても読めない。   「ダメだ、あたしには刺激が強すぎる」 「なにが強いのだ」 「ヒェッ!?」  突然声をかけられ、飛び跳ねる。さっきよりもずっと、大きくて高い声が出た。  急いで振り返ると、あたしのすぐ後ろには、すでに皇帝様が立っていた。  いつ入ってこられたのか、扉が開くのも気づかないくらい、本に集中していたみたい。
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