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「どれから読もうかな、ううーん、ああーっ、こんなにあると迷っちゃうよー」
とりあえずすぐそばにある本を手に取って、試しにパラパラめくってみる。
だけど、そこに書いてあるのは、あたしの知らない文字ばかり。このお城の柱とか、いろんなところで見かける、画数の多い難しい字だ。
もしかして、あたしが読める本って、ここにはない……?
ふとよぎった考えに不安になるけど、いやいや、そんなことはないって首を横に振る。
こんなに広いんだから、きっとあたしにも読める本があるはず……!
そう自分に言い聞かせ、目を凝らして背表紙を確認しながら進んでいく。
すると、やがてあたしにも読める文字を見つけた。
ひらがなで書かれた背表紙の本を、一冊手に取って開いてみる。
ひらがなとカタカナの中に、さっきの難しい字も混じってる。だけど、ひらがなで読み方が書いてあるから助かった。
「これの読み方は……ふんふん、これは……うんうん、なるほど、へぇー、こんなふうに読むんだ」
周りをよく見てみると、その他にも読める本がたくさんあった。
この難しい字を覚えれば、もっと読書の幅が広がるかもしれない。
そう思ったあたしは、回廊のような書庫を移動し、次から次へと本を読み進めていった。
そして気づいた頃には、最初の本棚に戻ってきていた。どうやら書庫を一周してきたみたい。
今なら意味がわかるかもしれないと、難しい字ばかりの本に、再挑戦してみることにした。
そうして手にした本を、ゆっくりと読み進めていく。
内容からして、男女の恋物語みたいだ。
だけど、あたしが知ってる絵本のような話じゃない。
触れ合いなんかの描写も、事細かに書かれてあった。
「え、えぇー……そ、そんなことまで、は、はわわ、なんてこと……」
これ以上読んじゃダメな気がするのに、ついついページをめくってしまう。すると、いきなり大きな絵が出てきて、ひぇっと小さな悲鳴を上げた。
開いた両ページいっぱいに、男女が裸で抱き合う姿が描いてある。
そう認識した瞬間、勢いよく本を閉じた。
挿絵にしては大きすぎる、文字しか書いてないと思って、完全に油断していた。
恥ずかしくて、この先はとても読めない。
「ダメだ、あたしには刺激が強すぎる」
「なにが強いのだ」
「ヒェッ!?」
突然声をかけられ、飛び跳ねる。さっきよりもずっと、大きくて高い声が出た。
急いで振り返ると、あたしのすぐ後ろには、すでに皇帝様が立っていた。
いつ入ってこられたのか、扉が開くのも気づかないくらい、本に集中していたみたい。
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