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「ちょっと、アンタ達朝からうるさいわよっ!」
ビクッと二人して肩が上がる。
振り返ると若葉色のブレザーにワインレッドのリボン、膝にかかる程度の指定のスカート。
左腕には【風紀委員】と書かれた腕章を付けた一人の女生徒が両腕を組んでこちらを睨んでいた。
掛けているメガネの奥には、強い正義感を感じさせる綺麗な目をしている。
「「なんだ、委員長か。」」
顔見知りだった事に安堵し肩が自然と下がる。
立花 みどり。僕と道司と同じクラスで、クラス委員長をやっている。
彼女は、絵に描いたような真面目な委員長。
そして驚くべきは、クラス委員長を務める以前から委員長というあだ名で呼ばれていた事だ。
「な、なんだとは何よ。アンタらの声、外まで響いてるわよ。」
ら。をつけるな。主に道司の声だろ。と心の中で呟く。
「何よ?」
まるで、心の声が聞こえたように睨みを利かす。
「何でもないです……。」ん?、よく見ると委員長の肩には雪を払った跡が残っていた。朝から風紀委員は大変らしい。
その後、僕は道司を半ば強引に引っ張り教室へ向かった。もちろん慰めながら。
バレンタインデーだと意識仕始めると、やはりなんだか落ち着か無かず妙な高揚感が胸にずっと残っていた。
だけどそれよりも、女子から声を掛けられる度に、前のめりになる道司を観察する方が見ていて楽しかった。
結局、何も起こらないまま2月14日はあっという間に過ぎてしまった。下校する時も、道司は下駄箱を開けるのを散々しぶっていたので、朝同様に僕が代理を努めるカタチになった。
残念ながらチョコは入っておらず、妙に清掃された下駄箱には外履きがあるのみだった。
しかし、やはりこの青春イベントは有るところにはしっかり発生していて、密会している男女や鞄を膨らませた生徒もちらほら見受けられた。
案外、道司の言っていた通りだったのかもしれない。
今朝から降っている雪は、よりいっそうに激しさを増して僕たちに追い打ちをかける。
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