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奇妙な噂話
2月16日。天候は雪。
バレンタインデーから二日明けた。誰が誰にチョコをあげた、誰と誰が付き合い始めたなど、実り有る噂話が聞こえてくる。
実に羨ましいものだ。
道司の気持ちを代弁するとしよう。
しかし。
しかし、そんな噂話と一緒に別種の噂話がクラス中に流れ出した。
【夜のグラウンドにスコップ音】、【夜のグラウンドですすり泣く女の子】そんな噂話がここ二日の間に流れ始めたのだ。
バレンタインデー直後にこんな噂話。少しイベントが早すぎるんじゃないか?と思う。
「なぁ、隼之介。聞いたか?」
前の席のイスに道司は、跨る様に逆に向きに座ると背もたれに肘を着いて言った。
「何がだ?」
噂話が多すぎてどれの事か分からん。人の恋路に僕はあまり興味が無い。
「何って、【グラウンドの幽霊】だよ。」
あぁ、そっちか。ん?
幽霊?
「幽霊が出たとは初耳だ。」
「ああ、夜のグラウンドにスコップを持った、すすり泣く女の幽霊が出たんだぜ。」と、何故か誇らしげに道司は言った。
なるほど。
こうやって噂話は尾ヒレを付けて行くんだな。
「ああ。なんとなく聞いてる。」
「まぁ、聞けよ隼之介。2月14日、一昨日の夜。隣のクラスのヤツが忘れ物をして学校の裏門から校内に入ろうとしたらしいんだけどさ。」
「うん。」
たしかに、裏門はグラウンド側から入る事が出来るが……。
「そしたら、ザッ。ザッ。ザッってな感じでスコップで雪をかく音が聞こえてきたらしい。」
なるほど、スコップ音とは雪かきの音だったのか。
「それで?」
「辺りを見ても誰も居なかったらしい。それで怖くなって急いで逃げたとか。」
暗くて見えなかっただけじゃないのか……。
道司は、疑る様な僕の表情に気付いたのか少しムッとしたが続ける。
「次のは凄いぞ。2月15日、昨日の夜だ。サッカー部のマネージャーの子が、部室に忘れ物を取りに行った時……。」
サッカー部の部室は、グラウンド近くのプレハブだったな。
ってか。うちの学校は、少し忘れ物が多すぎやしないか?
「聞こえてきたんだってよ。」
「何がさ?」
「決まってんだろ。女のすすり泣く声がだよ。」
「ほへぇ。それで?」
「当然、怖くなって逃げ出したらしい。」
なるほど。まぁ、たしかに怖いな。
「何かと聞き間違えただけだろ。」
道司は深く溜息をついて言った。
「隼之介、お前は夢が無さすぎる。」
「そいつは、どうも。」
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