奇妙な噂話

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放課後、僕は駅前の本屋へ立ち寄っていた。 バス通学の僕は道中、良く文庫本を読んで時間を潰している。たまたま今朝、今読んでいた本を読み終えたので新しい本を探しに来ていたのだ。 本屋は良い。特に選んでいる時間がワクワクするし楽しい。思わず夢中になってしまう。 恋愛もの、推理もの、はたまたファンタジーもの、一冊一冊手に取りジャケットから中身を想像する。 どれにしようか。 ※※※※※※ 何とか一冊を選び会計を済ませようとレジに並ぶ。 レジの向こうに掛かっている時計に目をやると時刻は7時半を過ぎていた。 どうやら、かなり長考していたらしい。 会計を済ませ、急いでバス停に向かった。辺りはもう真っ暗で余計に体感温度を下げてくる。 バス停のベンチに腰掛け、スマホを取り出す。 スマホを………。あれ? 無い……?何度もポケットを触るが何も入っていない。鞄の中もかきわけてみるが、スマホはどこにも見当たらなかった。 しまった。学校に忘れてきてしまった。 どうする?諦めて明日にするか?それとも取りに戻るか……。 最終のバスにはまだ時間に余裕がある。 まだこの時間なら、当直の教師や守衛の人が居るかもしれない。 仕方がない。 僕は猛ダッシュで、学校へ向かい走り出した。 道中、何度も雪に足を取られながらも何とか学校正門前まで辿り着いた。 しかし、正門には可動式の柵が既に広げられていた。 「裏門だ。」 僕は、校舎を回り込むとグラウンド側。裏門へと向かった。 やはり裏門は開いていた。 校内へ続く道を歩く。 「ホントにまだ人が居るのかな。」 校舎を見上げるも、非常口の緑色の光と、非常ボタンの赤いランプだけが強い存在感発していた。 その時だった。 ザッザッザッ。 背筋が冷えた。 ザッザッ。 スコップで雪をかく音がグラウンド側から聞こえた。 すぐに、道司の言葉が頭に浮かぶ。 【グラウンドの幽霊】。 別に忘れていた訳では無かったが、まさか自分が当事者になるとは思って居なかった。 ひっく。 ひっく。 泣いてる。 ザッザッ。 雪をかいてる。 ぐすん。 泣いてる。 冷静になれ。自分。 別に、何かされた訳では無いだろう。 落ち着いて。落ち着いて。 僕は、物影に身を隠すと音のする方へと視線をやった。 すると、グラウンドに積もった雪を一人、スコップでかき分けている人物が居た。 「………良し。足はあるな。」 安心材料を見つけ出す。 ひっく。ひっく。 でもどうやら、本当に泣いている様に見える。声からするにやはり女性のようだ。 距離もさほど離れて居ない。 ぱっと見、なかなかに小柄だ。女と言うより女子と言った方が、良いかもしれない。 観察する程に、恐怖心は薄くなっていく。 …………もう少し近づいてみるか。 僕は勇気を出し、徐々に距離を詰める。 段々と、夜目もきいてきた。 何となく、輪郭がハッキリしてくる。 その時、近くを車が通過した。車のヘッドライトが眼の前の女子を一瞬明るく照らした。 え?。 「委員長……。」
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