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「わんちゃん、飼い主は?」
抱き上げて優しく問い掛ければ、尻尾をぶんぶんと嬉しそうに振り回す。人懐っこい犬は息を荒げながら、私に体をすり寄せた。
可愛いでしょ? 可愛いでしょ?
そんな声が聞こえる気がして、にんまりとしてしまう。飼い主を探しても近くには見当たらない。ううん、心の中では一つの可能性が浮かんでいる。
「君はお家がないのかい?」
変わらずはっはっと息を荒げながら、私に必死にしがみつく。その必死さに人間味を感じてしまって、なんだか愛しくなってきた。
私が持てない、必死さ。この子だって生きるために、必死だよね。そうだよね。
「うちの子になる?」
まるで私の言葉が分かるかのように、わんっと短く一鳴きしたかと思うとそのまま腕の中で寝てしまった。
柔らかい暖かさに、雪の下にいるわけにもいかなくなってしまった。
「ただいま」
「あら、飼うの?」
「いいの?」
「いろいろ用意しなくちゃね、サンタさんからの贈り物かしらね」
お母さんが何も言わずに、ただ頷いて私の腕の中の子犬を撫でる。サンタさんからの贈り物、なんて言葉が妙にしっくりきた。
「じゃあ、君の名前はサンタがいいかな」
寝ていたはずのサンタは、しっかりと私の目を見てわんっと鳴いた。
「まずはお風呂だけどね」
お風呂を嫌がる猫の動画などをよく見るけれど、サンタは嫌がりもせず。むしろ気持ちよさそうに目を細めてうっとりとしている。
「サンタは、悩んでる私へのプレゼントなのかな」
サンタをタオルで拭き上げながら、首を傾げればサンタの首も同じように傾いていく。
「わかんないか、わかんないよねぇ」
洗い立てのサンタの毛はふわふわで、香ばしい匂いがして、つい私までうっとり目を細めてしまう。サンタはといえば出会った時はあんなに必死にしがみついてきたのに、家に入ってからはツンモードだ。
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