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道路に出ると、やはり俺らの島と同じような景色が広がっていた。
「何か、不思議な景色だな」
多島が辺りを見回して言う。
「あぁ。本当に左右対称だ。何だこの島は」
5人は道路横にある歩道を進んでいく。
「と、島民にあったりしないよね??」
「わからない。ただ、島民がいるのは確かだ。遭遇した時は、戦おうとは思うな。まず、森に隠れろ。この島の一周道路はほとんど森と接しているからな」
浅瀬で拾った硬い木の棒を手に、俺らは歩道を歩いて行く。
「…おっと、港が見えて来ましたね」
「やっと、北町か…」
目の前には下り坂のカーブが続いている。そのカーブを下った先の向こう側に、小さな町が見下ろせた。
「こ、こんなにそっくりな町が、あるなんて、」
そこには、北町を鏡合わせしたような町が広がっていた。
「そういえば本堂、ここはお前が住んでる町はたしかここだったな」
俺は本堂の方を振り返り、聞く。
「え、えぇ、間違いないです。左右対称ですが、私の住んでいる町にそっくりです」
瓜二つの島に、瓜二つの町。
仮に、この島もまた、同じような町が同じように広がっていて、島民も住んでいるとしたらーーーー
「おい、誰か来た!!隠れろ!!」
後ろから気配がした。5人はすかさず道路横の陰に身を潜める。
ーーーーブロロロロローーーー
後ろから軽トラが1台走って来た。
もちろんだが、誰かが乗っている。
その軽トラは俺らの前を通り過ぎていった。
「…行ったか」
「あの車、左ハンドルでしかも右側走ってた…」
「左右対称だからね…にしても本当に島民がいるなんて」
走り去って行く軽トラを不思議そうに多島と綾野が見つめる。
「…」
本堂が固まっている。
「ん、どうした??」
「あれ、私の家の車です。しかも、乗っていたのは、私のお父さんです」
ーーーー
町の前まで着いた。
ここまでは、軽トラ1台のみであったが、ここから先は町に入る。多くの島民に遭遇する確率が高くなるだろう。
「にしても本堂、本当にお前の親父なのか??」
多島が本堂に聞く。
「えぇ。車のナンバーも左右反対で読みづらかったですが、同じ番号でした。間違いありません」
本堂がメガネをカチャッとさせて言う。
「と、なると、この島に住む住民も同じ姿をしていることになるね」
…。島も島民も同じとなると…。
「本堂。お前、親父さんのところに行ってこい。部品を取るための工具を家から回収して、お前のところの船の部品を回収するんだ」
「え、ぇ!?会うんですか!?遭遇したら、殺されちゃうかもしれないんですよ!?」
「この島は左右対称だ。そして、同じ島民が住んでいる。瓜二つの島民がいても、判別が付かないはずだ」
「…僕も同じことを思っていた。この島の住人たちが僕たちと同じ姿をしているのだとしたら、この島の住人に化けることができる」
「灘くんまで…」
「だが、1人で行くには危険だ。俺がついて行く。他の3人は、ここで待機だ」
俺は立ち上がり、ポケットから無線機を取り出す。
「状況はこいつで連絡する。何かあれば連絡してくれ」
「…分かった。」
「おい待て亮二。行くなら俺の方が良いんじゃねぇか??」
「たしかに、万が一を考えた場合お前が行くべきだ。だが、お前はここに残れ。俺は1人で2人は守ってやれない。この中で2人を守ってやれるのは、お前だけだ」
「…そうだな。だけど気をつけて行けよ。何かあったらすぐ連絡しろよ」
「…あぁ」
俺は本堂と2人、町へと歩き出した。
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