出発

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出発

「2つの世界で、僕らは」 石像の前に1人の青年が立っている。 夕陽の光に照らされた石像が眩しい。 その石像に反射した光で、青年の様子はほとんど分からない。 ただ、口元はニコッとしていて、喜んでいるようであった。 「また会おう」 そう言って青年は姿を消した。 ーージリリリリリリリーー 「んー…ムニャ」 右腕を伸ばして、手で目覚ましを探す。 ーーパチンーー 「んー…んんっ」 二度寝したい…。 そう思いながらも、床と一体化しそうな体を起こす。 「もう9時半か。」 時計を見ながら、部屋のドアを開けて洗面所へと向かった。 ーーピィィーッーーー 大空をたくさんの鳶が羽ばたいている。 地平線の方には、大きな入道雲が見える。 「今日は大漁かなー」 そんなことを考えながら、今日も自転車を漕いで行く。 「おうー来たか、亮二ぃー」 先に港で待っていたじいちゃんがこちらに手を振る。 相変わらず早ぇなーじいちゃん。 港の前にある集会所の駐輪場に自転車を止め、鍵をかける。 「今日は大漁か??」 「あぁ、今日は獲れるでぇ」 そう言ってじいちゃんは船に乗り込み、エンジンをかける。 ーーーーブロロロローーーー 「亮二ぃ、俺ぁ今日島内集会に行かにゃならんから、お前行って来い」 「あぁ?俺だけでか??」 「お前と、あいつらでだ」 じいちゃんが集会所の方を振り向くと、入り口から4人が出て来た。 「よぉー亮二ー!」 「今日はよろしくね亮くん」 「よ、宜しく」 「お世話になりますよ、亮二くん」 1人ずつ説明していこう。 1人目の元気なやつは多島力也。とにかくゴツいから護衛にはもってこいだ。 2人目は綾野梨花。洞察力がある。気配りタイプだ。 3人目は灘新道。島外から来たばかりでまだわからない。 4人目は本堂秀。たまにだが頭が切れる。 今日は島内集会があるらしく、じいちゃんが漁に行けないらしい。だから、レクチャーを含めて俺たち5人で漁に行って来いということだ。 「じゃ俺ぁ集会行ってくるからな。よろしく頼むぞ亮二」 「分かったよ」 「あぁ、あと」 じいちゃんがトーンを下げ、小さな声で俺に言った。 「くれぐれも、あの島には近づくんじゃないぞ」 「…あぁ」 そして、俺らは5人で船に乗り込んだ。 この時点では、俺らはまだ、鏡島に辿り着くことを知らない。
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