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そうだ、俺だって遊びだ
「えっ!? マジ? 俺、冗談で言ったんだけど…… 」
頬がヒクヒクと動く。
── なぁんてな
などと言えたら、俺の人生はどれだけ違っていただろうか。
嘘が苦手だ。
「俺が自分で使っている物だ」
いい、もういい。
嘘など吐きたくないし、国親がどん引きして出て行ってくれるなら、それは、それで…… 願ったり叶ったりだ。
「どうやって? 」
は?
決して揶揄ってはいない顔で俺に訊く国親。
「ど、どうやって…… って? …… 」
しどろもどろどころではない、目眩がするほどに目が泳ぎ、顔の引きつりが激しすぎて俺の顔は変わってしまっているだろう。
「一朗太、ゲイなの? 」
「………… 」
そうだと言ったら、その手にしているおもちゃを離して、出て行ってくれるだろうか。
あれこれと頭の中で色々な考えが目まぐるしく回って、どう答えようかと迷っていた時、
「試させてよ。てか、おもちゃじゃないもん、挿れてみない? 」
どっっっくぅぅんっっ!!
体が動くほどに鼓動が打った。
それは、どういう意味だろうか。
…… そういう意味だろうか。
大汗をどくどくと掻き、今度は完全に固まった俺。
こんなドキドキ、何年振りだろう。
「ね、一朗太、俺の挿れてみる? 」
へっ!?
直球だな、というか、国親、君は男も相手にするのか?
もう、自分の顔がどうなっているのか分からない。
スルとしたなら、何年振りだろうかと意図せず胸も躍ってしまった。
しかも、俺の好みドストライク。
今まで関係を持った男性の中で群を抜いての顔スタイル。
俺の股間が疼かないわけがないだろうっ!
性格的、人間的にはどうであれ、あの容姿の男に抱かれる?
卒倒しそうだった。
「一朗太、寝室に行こうぜ」
鼻息が荒くなってしまっている自分を隠すのが精一杯、肩で息をしている自分を懸命に落ち着かせた。
「き、きみはだ、男性とも、ね、寝るの、か? 」
緊張しすぎて声が裏返ってしまった。
「寝たことないよ。だからやってみたい」
などと言って、興味津々の顔は変わらないまま、目がキラキラと輝いている。まるで、好奇心いっぱいの少年のようだ。
しかし、男の裸を見たところで、勃つものだって勃たないだろうと思うし、途中で…… いやのっけから「やっぱ無理だわ」などと言われたら俺が傷つく。
ここは、やめておくべきだ。
「悪いが、俺は君の遊び相手ではない」
「…… 遊び? 」
「君の好奇心に付き合ってやるほど、お人好しではないし、馬鹿でもない」
「お人好しなんて、一朗太からかけ離れているだろ? それに馬鹿だなんて思ってないよ」
真面目に答える国親。
「俺は同性愛者なんだ! セックスだって本気なんだ!」
はっ! 大きな声でなにを言ってしまっているんだ、俺は。
国親が真剣な顔で俺を見ている。今、彼はどう思っているのだろうか。
変な汗が止まらない。
「愛があるセックスしかしないの? 一朗太は」
「そ、そうだ!…… 」
いや、そんなことない。
「…… な、なぁんてな…… 」
…… なぜ今、「なぁんてな」とか言ったんだ俺。もっと違う場面で言わなきゃ駄目なのに。
「なんだよ、冗談かよ、じゃ、さ…… ほら、してみようぜ」
国親に肩を抱かれ、ビクッと大きく体が動いた。
視線が俺の股間に流れる国親、「ん? 」としたあと片唇をあげてニヤリとした。
「もう、一朗太、大きくしちゃってんじゃん」
…… さっきから大変なんだ、俺の股間が。ヒクヒクとパンツの中で動いているし、国親のモノを想像しただけでスラックスにまで先走り汁が染み出そうだ、もう、どうにかしてくれ。
「んん…… あぁん…… ん…… 」
「色っぽい声出すね、一朗太」
「や、ん、や…… めて…… く、れ…… 」
「ん? やめていいの? 」
ベッドに静かに倒されて、国親の手が俺の股間の硬いモノを握りしめ上下させる。
「あっ!やっ!んんんっ!はぅ…… や、め…… うっふっ…… んんんーー、た、の、む…… ああ、ああぁぁんっ!」
他人にいじられるのなんか二年以上振り、刺激があまりに強すぎてもう射精てしまいそうだ。
俺のペニスを動かしながら、シャツのボタンを器用に外していくと、いきなり乳首を舐められて悲鳴に近い声をあげてしまう。
「ひゃあーーーっ!んんっ!やめっ!ああああっっ!んっ!ああーっ!」
その瞬間イってしまって、ビクンビクンと身体が痙攣を起こしたようになった。
パンツの中で…… ああ、洗濯が面倒だな、なんてぼーっとした頭で思う。
しかし、それにしても、こんなにも気持ちがいいのは何年振りだろうか。
俺はもう、たがが外れたようになってしまった。
「…… 君のが、欲しい」
とろんとした顔で国親の顔を見つめて、そんなことを口走る、俺はもう俺じゃない。
「…… いい子だな、ちゃんとお強請りできるんじゃん、可愛いな」
そう言うと俺の唇をぺろりと舐めるから、物欲しそうな顔で見つめてしまう。
「キス、して欲しい? 」
そんなことを訊かれて、うん、なんて言いたくない。ぷいと横を向くと唇で塞ぎながら俺の顔を正面に戻し、ぴちゃぴちゃと音を立ててキスを続ける。
キスをしながら、俺の服を全部脱がし、自分も上着やズボンを脱ぎ始めた国親。
「ウェッティーある? 」
「…… ここに」
訊かれるまま、ウェッティーの場所を指さすとおもむろに自分の手に取り、先ほど出してしまった俺の精液を丁寧に拭いてくれる。
軽い人間の割に、そういったまめで配慮のあるところがギャップ萌えさせるんだろう、かなりモテるだろうし経験だってあるのだろうと分かる。
「あれ? また勃っちゃったね」
「…… 仕方ないだろう」
君がそんなにも丁寧に、俺のペニスを綺麗にしてくれるんだ、その顔で。
こんないい男とできるなら、一生の思い出になる。
俺だって遊びだ、そうだ遊びだ、国親と遊んでやってるんだ。
割り切って、今夜は思い切り乱れてやる。
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