番茶

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番茶

麗らかな春の日差しが畳に踊る。 姉は熱心に歌を歌っている。 姉が歌うのは食器がなかなか片付かない時だ。 うちは二人暮しなので、そう食器は多くないはずなのだが。 「ねーちゃん、後は洗うから。」 「まぁ文ちゃんは優しいのねー。」 姉は、とぽとぽと番茶をついだ。 「暑くなってきたらこれよねー。」 「うん。」 姉お手製の番茶は1度煮出すのがこつなんだそう。 「行くわよ。」 姉はそういって、番茶をペットボトルにつめ始めた。 「スーパーのタイムセールがあるからね。」 姉はそういってそそくさでていった。 鏡の前で薄く化粧をして、ちゃんと帽子をかぶる。 部屋で一人取り残された僕は、なぜか姉と同じ調子で歌を歌いながら、食器を洗う。
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